09.Love means not ever having to say that you are sorry.
私の考えが甘かった。
「好きだ。俺と付き合ってほしい」
朝方、ふみに『頑張って』とよくわからない応援をされ、それを特に聞き返すこともなく、『え? あぁどうも』と返し授業の準備に戻った私を責めたい。おそらく、ふみはこのことを想定して言ったのだろう。
ふみに言われ、保健室に薬を取りに行き、その帰りに兵助に会った。目があった途端、挨拶もそこそこに兵助に腕を引かれ、人気のないところに連れて行かれた。まぁ、正直謀られたな・と途中で気付いたし、兵助と改めて向かい合った時には予感もした。
まさかその予感が当たるとは思わなかったけど。大体にして、私はそういう感を外すことが多いから。
「、聞いてるか? 俺は、が好きなんだ。どうしようもないくらい。のいない世界なんて考えられない。ずっとの傍にいたいんだ。の傍に寄り添う権利がほしい」
「ちょ、あの……」
「神様とやらがいるのなら、といられることを感謝するよ。の思うことは全て知りたいし、解りたい。望みだって叶えてやりたいと思う。……最初は見てるだけで幸せだったんだ。でも、もうそれだけじゃ我慢できなくなった。の喜ぶ顔や泣いた顔、全部知りたい。俺がの喜ぶことをしてやりたい。は俺が守りたいんだ。……あぁ、何か違うな。これは俺のしたいことだ。ごめん。好きっていう言葉以外に正しい言葉が思い浮かばない。好き、好きなんだ。のことが。どうしようもないくらい」
恥ずかしくて顔を俯かせる。兵助はそれを許してはくれないようで、いつの間にか縮まっていた距離をさらに縮め、私を抱き締めるような体制に落ち着いた。
私の心臓の音が兵助に聞こえそうで、腕を伸ばすが、びくともしない。まさかこんなことで男女の力の差を実感するとは思わなかった。
「は、離して……」
「ごめん。無理だ。……そんなに赤い顔して目を潤ませて……逆効果に決まってるだろ」
先程よりも強く抱き込まれる。目の前には藤色の装束が広がっていて、頭がくらくらしてきた。
「なぁ。なぁ、。俺を卑怯だと思うか? こうしての逃げ場を無くして、たった一つしか答えを認めようとしない俺を。なぁ、でも後悔してないんだ。が好きだから」
どこかで聞いた言葉が浮かぶ。Love means not ever having to say that you are sorry.私は、後悔しているだろうか。この状況を。
だって、嫌ならそれなりの対応をしていればよかったんだから。卑怯なのは、私の方だ。兵助の気持ちを知っておきながら、知らないふりをして、兵助の様子を伺っていた。好かれている、と浮かれていたのかもしれない。
今となってはわからないけれど。
「……。好きだ。……返事を、聞かせてくれないか」
確かに、卑怯かもしれない。こんなことされて、答えなんてただ一つしか出てこない。でも、気持ちは強制されたものじゃない。
「……私に、兵助と同じくらい、気持ちを返すことは出来るかなぁ……」
その言葉に、兵助は身体を揺らして、そして、小さく笑った。
「無理じゃないか。俺とじゃ年季の入り方が違うんだ。それでなくとも、俺の方が大きくて重いよ」
兵助は続ける。
「それでいいんだ。俺はに同じく想ってほしいとは思ったことないんだ。ただ、が俺に気持ちを向けてくれるってだけで十分満たされる」
「そっか。そうなんだ。……じゃあ、大丈夫かな。上手くやれると思うよ」
まだ、平成の時代と区切りがついたわけじゃないし、帰りたいとも思ってはいる。けれど、こんな兵助を目の前にしたら、いいかな、って思えた。
「五年い組の久々知兵助が、好きです」
「……ありがとう。好きになってくれて」
To be continued......
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ちょっと短めです。
で、多分次が最後になります。そしたら第二幕が始められる、というわけですね!!
その前に2個くらい番外挟もうとは思ってます。
2011/09/06