No/Knows;U

L'inizio










熱に浮かされたような目をしている兵助を何とか宥め、ようやく落ち着いて座ることができた。兵助は離してくれる気がさらさらないようなので、大人しく腕の中にいることを妥協した。胡座をかいた兵助の膝の上に座っている私。誰も見られたくはない姿である。まさかこんな恥ずかしい格好する羽目になるとは思わなかった。
けれど大人しくしていなければならない。どうやらこの状況は、最近の私の行動が招いた結果らしいからだ。
シナ先生やケマトメ先輩に言っていたことを思い出して、ため息をつきたくなる。



「兵助、あのね、若菜ちゃ」

「あの女の話なんか聞きたくない。ねぇ、今俺といるのに。俺のこと考えて」

「で、でも……」

「いいから。そうだ、。貰い物なんだけど、べこ餅があるんだ。食べよう」



兵助は私の話をあくまで聞きたくないらしい。手を伸ばして、べこ餅の入ってる箱を引き寄せた。
はい、とべこ餅を差し出されるけど、それを受け取らず、兵助をじとりと見上げる。意図は分かっているようで、兵助は眉間に皺を寄せた。腕の力が少し強くなったようだ。



「……わかった。聞くよ……」



折れてくれたらしい。もの凄く不満げだが。



「あの子のことは、学園長先生から任されたことだから、途中で放り投げるなんて出来ない」

「だからって、俺とだけじゃなく、御園や勘右衛門たちと一緒に居られなくなるんなておかしいだろ。それにあの女、を別の人と勘違いした挙句、の存在を否定してるじゃないか」



何でそんなヤツの面倒を見なきゃならないんだ、と低い声で言われる。
思うに、若菜ちゃんは焦っているのではないだろうか。若菜ちゃんが帰るためには、『19歳の』が必要らしいし、もし時間制限がついてるとすれば、納得がいく。若菜ちゃんは話す度、高校の時の思い出を語っていく。飽きもせずに。その話の中で、今ここにいる私が『らしくない』だなんて言うのは頻繁に聞く。気にしないようにはしているのだけど、あまり気分がいいとは言えない。



「それは、あの子、いきなり自分の知らないところに来て戸惑って、似てる人がいたから思わず」

「そうやってはあの女を庇う。……それを聞くたび、何かとあの女の間に何かあるんじゃないかと勘繰ってしまいそうになる」



何もない、とは言い切れないんだけど、そんなことを言うつもりないし、何より兵助はそういう意味で言ったでもない。



「兵助の考えすぎだよ」

「……だよな」



何か言いたそうな顔をして、でも兵助は無理やり納得してくれたようだ。悪いけど、押し通すしかない。



「でも、。我慢とか、無理しなくていいんだからな。そもそもが心を砕く必要なんてないんだし……」

「うん。ありがとう。キツくなったらすぐ、兵助に言うから」

「ならいいんだけど……」



これからは、なるべく兵助たちとの時間も作るようにしよう。そろそろ若菜ちゃんも慣れてきただろうし、ボロとか出してしまう前に距離はとっておくべきだ。
大丈夫、出来る。



「……いつかは、の抱えてる重い荷物。俺にも分けれくれる、よな?」



……隠せてるはず、なんだけどな。兵助の観察眼にはいつも驚かされる。曖昧に兵助に笑って返しておく。分けるわけないでしょ。そんなことしたら精神病院いけって言われるって。

結局この日は若菜ちゃんの様子を見に行くことができなかった。















































「あら。一緒に食べるの、久しぶりね」

「……3日しか」

「3日も、よ。にとって私ってそんな存在? 同じ部屋なのに全然顔合わせてないのよ。……そんなに天女サマが大事なのかしら?」



兵助と一緒に朝食をとりに行くと、先に座っていたふみに睨まれた。



「酷い酷い酷い!! 私たちの友情ってそんなもんだったの?! 親友だと思ってたのは私だけだったのかなぁ。いえ、いいのよ? 私との仲だもの、すぐに友情回復するわ。けど、あなたの恋人である久々知兵助くんに寂しい思いをさせるのはどうかと思うのよねぇ……」

「あれ、何か違う方に話が……」



味方はいないようだった。



「兵助、ちゃんに首輪とか付けといたほうがいいかもよ。あんな得体のしれない不審な女に奪われる前にさ」

は本当にモノが捨てられないな。その癖直したほうがいいと思う」

勘ちゃんと鉢屋が失礼なことを言ってくる。けど、



「検討しとく」



兵助が真面目な顔して答える。本気の顔だ。何だか、兵助が変だ。いや、兵助に限らず、みんなおかしい。
とにかく普段の空気に戻そうと口を開いた。その時。



先輩!! おはようございます! 昨日はどちらにいらっしゃったんですか? 夕食の時もご不在だったみらいで……寂しかったんですけど」



若菜ちゃんがやってきた。やってきてしまった。みんなの空気が冷えきった。
何でこんなタイミングでくるんだ馬鹿。











                            To be continued......










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一気に更新しすぎて、ペースダウンしちゃいました。
そろそろ久々知君にはヤンデレを発揮していただきたい。






                           2011/09/15