案の定、は引いた。アタリなのかハズレなのか。言うまでもなく、ハズレだと思う。先が赤いのを見て、ちょんぎってやろうかと思った。
引いた後のは、意識的に無表情を作ろうとしているようで、どことなく顔が硬かった。口元を隠そうとしている手がわざとらしい。笑ってるんじゃないでしょうね。
シナ先生に連れて行かれたの背中を見送った。そして、あの不審人物に宛がわれた部屋に行くことにする。
これからのことを考えると、とにかく頭が痛い。
何故なのか、はあの女を相当気にかけているみたいだ。受け止めた責任感、なのか、どうなのか。面倒なことには関わりたくない、といつも言っているがあの気にかけよう……誰が見てもおかしい。
はきっと、いつものように客観的に見ることができなくなるだろう、な。だからと言って私が代わりに、とかは思ってないけど。どうせ私も無理なんだから。
部屋の前の柱に背中を預けた。
そういえば、あまりよくあの女を観察してなかった。毒にしかならないけど、判断はしっかりしておかないと。私から友人と取った罪は重いわよ、天女様とやら。
しばらく待っていれば、閉まっていた障子が開いて、中からと天女サマが出てきた。思わず顔が歪んだ。
「……、その人、連れてくの?」
「彼女の希望でね……」
「……ふぅん」
自分でも露骨だと思うほどの嫌な顔で、天女サマとやらを上から下まで見る。
が着付けたらしい。そもそも、この女は小袖を気慣れていないようで、動きがぎこちない。……どっかの城の忍者では、ないな。
苦笑いしているに、こめかみがピクリと動いた。まるで守るかのような立ち方にイラついた。そっと耳に口を寄せた。
「……気を付けなさいよ」
「もちろん、そのつもり」
「ならいいのよ」
分かってんのかしら、この子。
「どうか、なさったんですか?」
空気を読まない発言に、顔を背けた。
は律儀に笑顔で口を開いた。
「何でもないですよ、天女様」
「……先輩、その、天女様っていうのやめていただけませんか? 若菜、って呼んでください」
「じゃあ、若菜さん。行きましょうか。ふみ、行こうか」
「さん、もやめてください。あ、ちゃん付けがいいです!」
気持ち悪かった。媚を売って。にベタベタと触ってまとわりついて。声がどうにも猫なで声にしか聞こえない。
そしてわけがわからない。私たちより年上で、「先輩」だと?
あぁ嫌だ気味が悪い。こんなのに私の友人の時間を奪われるなんて。きっとへいすけも思うだろう。もしかしたらもう気づいてるかもしれない。さっき食堂で一番静かだったし。
本当にかわいそう。私だって、友人取られて寂しい思いをしてたわけだけど、それとは別に、へいすけは幸せの真っ只中だったのにね。ちょっとざまぁみろって思わなくもないけど。今日のデートだって行けずじまいに終わったわけだし。
の髪をまとめている濃紅の紐が存在を主張している。
「……私、彼女のこと好きになれそうにないわ」
というより、好きになる気がないのだけど。だからも好きになったらダメなのよ。
好き嫌いの違いって仲の亀裂に繋がるらしいから。
END
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