とりあえず食堂に連れてきて座らせたけど、相変わらずは何事かを考え込んでいる。
「ちゃん、ダメだよ。安易に近づいちゃ……」
「そうよ。アンタがそんなに人助けが好きだとは思ってなかったわ」
雷蔵と御園に続いて、皆がに先程の軽率な行動について説教を始めた。けれどの耳には届いていないらしい。
「ね。あの落ちてきた子、どうなるんだろう」
終いにはコレだ。のその言葉に、つい苦虫を噛み潰す思いだ。
「……アンタね……。やめなさいよ。そういうのに首突っ込んで、ろくな事ないんだから」
どうやら皆、の様子が少し違うことに気付いているようで、俺達の周りだけ気まずい雰囲気だ。
それには気づかないようで、忙しなく机の上に置いてた手が動いている。組んだり、ほどいたり……の癖だ。
「……まぁ、全てはあの落ちてきた『天女サマ』とやらが目を覚ましてから、だな。先生方が今学園長の庵で会議されてるそうだ」
学級委員長委員会の三郎が渋々口を開いた。同じく勘右衛門も頷いて続けた。
「最終的に、どうなるかは……。学園で保護するのか、処分するのか……」
それを聞いたは一瞬で顔を青くした。
「処分……」
「まぁ、すぐにそうなることはないだろう。そうだな、様子見か、監視か、というところだろうな」
「そうなるだろうな」
監視はきっと先生方がなさるだろうし、あの不審人物が学園内を歩き回ることもないだろう。だからは気にしたってどうしようもないのだ。何が気になるのかわからないがさっさと諦めて欲しい。
「三郎と兵助の言う通りになるだろ。だからさ、。あまり気にしない方がいい。オレらもだけど、先輩方は皆あの落ちてきた奴を警戒してる。近づかない方がいいぜ」
ハチがそう言って困ったような顔をする。そうだそうだ、と言うように皆頷く。頼むから関わろうとしてくれるな。
そんな時、忍の卵にあるまじき足音を立てて、食堂にくのたまがやってきた。確か、と御園の友人だったはずだ。俺とが付き合い始めたとき、最初にイチャモンつけてきた子だった。
「あっれー、どしたのそんな急いで」
「くのたま同級生にシナ先生から招集よ。……さっき落ちてきた人が目を覚まして、対応が決まったみたいで……」
す、っと目が細くなった。いい予感が全くしない。俺のが持っていかれるような気がした。つい、隣のの手を握った。反応がない。
「……それで、私達にお呼び出しがかかるの?」
そう言っては俺の手を何事もなかったかのように振りほどき、席を立った。
「、とりあえず先に、ソレ、着替えてよね」
「あ、うん。……どこ集合?」
「学園長の庵の前」
「了解。じゃ、ふみ、行こうか」
「あー何か厄介事押し付けられそうな気がするーが! それに巻き込まれる私カワイソッ!」
「……何言ってんの」
そして御園を軽く小突いて……の顔に、予感が当たる気がした。
「。後で……。ここにいるから、終わったら来て」
「うん、わかった」
の口元が笑っていた。まるで待っていたかのように。
手を振って去っていったを見送って、ため息が出た。
「兵助、顔怖いよ」
「そうか」
「どうするんだ、兵助?」
とりあえず、は絶対誰にも渡さない、けど。全ては結果待ちだ。ただ……
「ふみも言ってたけど、きっとちゃん、引き当てるよ」
何かしら、あの不審人物に関わることになる。なんて勘右衛門が言った。
「俺もそう思ってるよ……」
が帰ってきたらちゃんと言いつけておこう。あれは不審人物だから関わっちゃダメなんだ、って。
だから俺以外のことは考えるな。
END
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