"Truth is always strange, stranger than fiction.";feat.久々知兵助
「へーすけ。熱出したっていうから、運んでもらえる?」
「あぁ、わかった」
無事恋仲になれた後、すぐにいつものメンバーに報告をした。皆一様に喜んで祝ってくれた。
付き合うようになった、といっても今までの生活に変わりはない。ただ少しスキンシップが増えた程度だろうか。遠慮するつもりはさらさらないが、を急かすつもりも同様にない。手に入ったのだから、焦る必要もない、と思う。身構えていたらしいにその旨を伝えれば、嬉しそうにはにかんだ。
「朝は具合悪そうには見えなかったんだけどね」
「そうなのか?」
今日はまだ会っていないからわからなかった。御園が言うには、は突然熱を出すことが多いらしい。その度に自分が保健室に呼ばれ、を運ぶように言われるそうだ。低学年だった頃はまだ運べたが、近頃はくのたまの同級生と二人がかりで運んでいたそうだ。
「でも恋人も出来たんだし、へいすけに運んでもらうのが楽よね」
「俺は構わないけど。でも、いいのか? くのたま長屋に俺が入って」
「問題ないでしょ。病人を運んでくれるわけだし。私が案内するから、大丈夫」
ならいいんだけど。を抱えてくのたまの罠に引っかかるのは勘弁だ。
保健室からを引き取って、廊下を進む。
薬を飲んだはぐったりと俺に身体を預けている。本当に顔が青い。確かに、あんな薬を飲まされたらこうなってしまうのも頷く。あれは人が飲む色じゃなかった。
しばしば腕の中から聞こえる微かな唸り声に、早く寝かさなければ、と先を急ぐ。
くのたま長屋に入った途端、好奇の目が俺に注がれる。若干居心地が悪い。けれど、御園が側を歩いているし、何よりを運んでいるのが功を制しているのか、誰からも何も飛んでこない。
「>アンタ、久々知兵助と付き合ってるって本当だったの?!」
突然、横から甲高い声がした。見たことがある。の同級生だ。御園の次くらいにと仲がいいくのたまだったじゃないだろうか。
にはそのくのたまの声は頭に響くらしく、眉間にシワが寄っている。
「質問は後日、文書にて受け付けるから……本当にマジで今は勘弁してください」
「、わざわざそんなことしなくても。……本当だよ。俺とは付き合ってる」
自分でも明るい声が出た自覚がある。は具合を悪くしているというのに、俺ってやつは。
けれど、堂々と『付き合っている』と言える喜びはこの上ない。
くのたまは俺を一睨みした後、に体調を気遣う言葉をかけて去っていった。
視線を感じてを見やると、目があった。思わず微笑むと、は恥ずかしそうに目を閉じて、また俺の方に頭を預けた。ついつい笑ってしまう。本当に、は可愛らしい。
が何か呟いたが、俺には聞こえず、問い返しても楽しそうな声ではぐらかすだけで、答えはもらえなかった。の風邪が治ったら改めて聞いてみようと思う。
END