"There is nothing in this world constant but inconstancy.";feat.久々知兵助
「へーすけー。いつまでそっち見てんの、っていうかさっきから外しか見てないんだけど」
お菓子も全然食べてないし。
そういう勘右衛門をチラリと一瞥して、また視線を外に戻した。いつ、の姿が現れるかわからないから。
「ていうかまだ帰ってこないでしょ。町まで出てるんだし」
御園は、が残したメモを見たようで、半刻ほど前にここに来た。
「あーこのお菓子美味しいねぇ」
「それはよかった。ほら、兵助も食べなよ」
「あーだめだめ。こいつもう頭ン中の事しか考えてねーもん」
「そうやってると、見た目は主人の帰りを待っている犬みたいだよね」
廊下から人がやってくる気配がしたが、これは三郎だ。さっき茶がなくなったからと淹れにいったから、戻ってきたんだろう。
「……うわ、兵助。お前さっきからその場所、変わってないぞ」
「……いいだろ別に」
何と言われようと、いい。俺は、を待ちたい。それ以外にしたいことなんてない。
「……は愛されてるわよねぇ……正直さっさとくっついて欲しい」
「いや、ふみ。兵助の一方的な想いだけじゃどうしようもできないんだよ? あ、ごめん兵助。謝るから手裏剣投げないで」
一方的。認めたくないが事実だ。知ってるさ、そんなの。を好きになってからそんなのずっとだ。少し距離が近づいたくらいじゃ、変わらない。
「一方的ねぇ……。いやさ、実はそうでもないんじゃないかと私は思うのよね」
「え? 何、ちゃんも兵助の事好きになったとか?」
「それは分かんないけど。けどやっぱり微妙ではあるけど変化はあるわけで。だって、私たち二人でいる時だって、話題に兵助がでること少なくないし」
「詳しく」
が、俺のこと話してくれてる。何だか、舞い上がってしまいそうだ。
「え、いや、本当に大したことは話さないわよ? これ明日兵助に聞こう、とか本当に他愛の無い会話だって」
それでもいい。ちゃんと、ちゃんとの中に俺の存在があるということが重要だ。
「というかね。根本的なことなんだけど。兵助、に告白したの?」
「言ってない」
「それじゃあ進みようがないじゃない!!」
言う時期じゃない。俺はそう思ってる。急いてはことを仕損じる。
「まぁまぁふみちゃん、落ち着いて」
「ふみは考えが及んでいないんじゃないか?」
「……三郎は何が言いたいの?」
「時期っていうのがあると言ってるんだ」
「ねぇふみ、考えてみなよ。今もし兵助がちゃんに気持ちを言ったとする。結果は五分五分っていうか、どっちかったら断られそうだよね」
は今、悩んでいる。それは、十中八九、俺のことだと思う。自身の言葉を探しているだろう。
俺は、どこか遠い目をして俺たちを見ているから返事がほしいわけじゃない。真っ直ぐに俺を見るから返事がほしい。
「断られたところで兵助が諦めるとは思わないけど、どうせ手に入れるなら、最初からいい返事がほしいじゃない」
俺のに対する想いは、ものすごく、他人から見れは非常に重いだろうということは理解している。ここまで育ったのは、俺自身の性質もあるだろが、周りの友人たちの影響も捨てきれないだろう。
一番最初に俺の気持ちを知った時の彼らは、引くでも驚くでもなかった。皆、笑って「協力するよ」だったのを覚えている。
「……勘ちゃん。今、結構怖いこと言ってるって自覚、ある?」
「前に言わなかったっけ? 俺たち、確かにちゃんの事友人だと思ってるけど、どちらかというと兵助の味方なんだ、って」
だって、俺、ちゃんと知り合う時は兵助の彼女として知り合うとばっかり思ってたんだもん。
たまたま見た御園の顔が、呆然としていた。視線を外に戻す。
そう。そのつもりだった。御園というの親友が勘右衛門の幼馴染だという関係を使わなかったのは、そういう理由もあった。
俺は、の友人にはなりたくない。なりたくなかった。恋人になりたいんだ。そのために出来ることはするし、してるつもりだ。どんな結果でも、最終的に俺のもとにが落ちてくればいい。
、、好きなんだ。だから、早く。早く気づいてくれ。
自分が今どこにいるのか。
END