轟君とこたつ 01




轟君とこたつ@

 家は古くからの洋館で、和室に物凄く憧れていた。特にこたつって神がかっているレベルだと思う。
寮制になって、轟君の部屋が和室にリフォームされるというミラクルを見て以来、冬が近くなってくるとほぼ毎日「こたつ出す?」って聞いていた。そしたらつい先日、「こたつ出したぞ」って教えてくれたから籠に沢山のみかんを持って轟君の部屋を訪ねさせてもらった。
そこには夢にまで見たこたつが!!
轟君、嫌な顔一つせずお茶も出してくれるし、ついついそれに甘えちゃってほぼ毎日部屋に入り浸り状態だったもんだからとうとうみんなに聞かれた。「付き合ってるの?」と、そうやって聞かれて初めてこれはまずいと気付いた。
ちょっとこたつテンションにまかせすぎたぞ、と反省し、確かに付き合ってもいない男の子の部屋に入り浸るのはよくないな、とこたつに入れないのは寂しいが轟君の部屋に通うのをやめた。そうしたら今度は轟君が若干寂しそうな(に見える)顔で、
「来ないのか? せっかくお前が言うから出したのに」
と。
そこで気づいたんだけど、轟君個性の関係なのかあまり気温の変化に敏感でなく、別に大して暖房器具が必要なかった。
なんてクラスメイト思いなんだ轟君……!と感動したんだけど、やっぱり押しかけるのは良くないし、と私の見解を話した。気持ちは凄く有難いんだけど、周りに誤解を生んでしまうし轟君に申し訳ないから部屋に行くのはやめるね。
そう言うと轟君は物凄く不機嫌そうな顔して私の腕を掴んでずんずんと歩き出した。着いた先は轟君の部屋で、こたつとみかんが。あと何故かうさぎ。多分口田くんのペットだ。「猫は無理だった、悪ぃ」こたつに入れられて、うさぎを抱っこさせられる。もふもふ。
すると後ろから囲うように轟君がこたつに入ってきて、抱き締められているような形になった。えぇ!? とびっくりしていると、轟君は気にした様子もなくみかんを剥き始めた。
「と、轟君?」
「……お前が、こたつ目当てで俺の部屋に来てることは分かってた。だからそれを利用させてもらおうって思ってた」
剥かれたみかんが口に押し当てられる。た、食べろってことだろうか、と口を開ければみかんが入ってくる。それを見た轟君は満足そうに微笑んで、
「だからお前は今まで通り俺の部屋でこたつに入っていればいい。後は俺がこたつを仕舞うまでに何とかするから、な?」
何をどうするつもりなのか、聞いたらドツボにハマりそうだから黙って与えられたうさぎで赤くなっているだろう顔を隠した。それでも隠しきれていないのか、轟君は楽しそうに笑う。
今は12月で、こたつを仕舞うとしたら後2ヶ月は先だろうか。その時まで、私どうされちゃうんだろう。
「いや、その、ね? 遠慮しとこーかなー…なんて」
みかんを押し付けられる。
「俺を期待させておいて、それはいくら何でも酷いだろ。責任、取ってくれ」
だから、どうやって、なんて聞いたら今ここでその責任を取らされそうだ。
「な、いいだろ……?」
すりすりと髪に頬ずりされる。みかんを向いていた手がしっかりと身体に回って強く抱きしめられた。
逃げられる気がしない。