13:体育祭 -03-




結果、11位。イレブン。
真後ろにいた尾白君に抜かされる前にゴールしていた。地味に競歩は疲れるので、早々にやめて早歩きしてたのだけど。
第三関門を突破した段階で、4位か5位だった。そこからゴールまで、そんなに距離もなかったので、この順位。もしちゃんと走っていたら……いや、私鈍足だからな。大して変わらなかっただろう。
それにしても、11位は予想外だ。この障害物競走と“個性”の相性が良すぎた。
ゴールした全員が息を切らせているのに対し、私一人平常通り。まぁ、走ってないからね。飯田君に真面目にやるように言われたけれど、「作戦だよ」と言うようなことを言うと、神妙な顔して下がっていった。ちょろい。

さて、次の競技である騎馬戦。変更がなければだけど。
これも、私の“個性”なら一人勝ちも夢じゃない。全員の鉢巻きに糸付けて、試合終了3秒前にでも回収すればいい。
が、しかし。



「予選通過は上位42名!!! 残念ながら落ちちゃった人も安心しなさい! まだ見せ場は用意されてるわ!! そして次からいよいよ本選よ!! ここからは取材陣も白熱してくるよ! キバリなさい!!!」



騎馬戦から本選なのである。
つまり、ここに出場できるという時点で、私は師匠からの課題をクリアしたことになる。
なので、ここは適当な人と組んで、チームの人には悪いけど、後は流すだけって感じだ。



「さーて第二種目よ!! 私はもう知ってるけど〜〜〜〜…何かしら!!? 言ってるそばから」



全員がスクリーンに注目してる。



「コレよ!!!!」



騎馬戦。変更なし。
そのまま先生がルールの説明を行う。ポイント奪取性の騎馬戦。11位である私の持ち点は160点ということになる。そこそこ高い点数で、チームを組むなら嫌われない点数だろう。少なくとも、1位の1000万に比べれば。何というか、いくら下克上とはいえ、緑谷君いじめられてんじゃないの、って疑いたくなるルールだ。
どこかのヒーローも言っていたけれど、この体育祭は、ヒーローとしての気構え云々よりもヒーロー社会に出てからの生存競争をシュミレーションしている。
ヒーロー飽和社会で生き抜くためには、他を蹴落としてでも活躍しなくてはいけない。予選の障害物競争がそれに当てはまる。
そして、この騎馬戦で表されるように、商売敵であろうが協力して解決に当たらなくてはならない事案もある。自分の勝利がチームメイトの勝利となるわけだ。相性なり“個性”なり……いわゆる持ちつ持たれつ、という。
プロになれば当たり前の生き方を今からやってるわけだ。
まぁ、ただのイベントではなく、学ぶべきところがありますよ、ってことだ。



「それじゃこれより15分! チーム決めの交渉タイムスタートよ!」

「15分!!?」



さて、どうしようか。適当に声を掛けてくれた人の所に入るのが良さそうだ。
誰か声を掛けてくれないものか、とキョロキョロしていると、別に望んでいない人と目が合った。焦凍もだ。しかもこちらに近づいてきてる。
あれはきっと、同じこと考えたんだろう。私の糸があれば大分有利に事が進むと。
糸で鉢巻きとってもいいし、万が一牙から落ちそうになった時の命綱でも使える。この競技に於いて大分万能だ。ただ、焦凍のチームに入ったら、ガチの激戦区入りだし、疲れることはしたくない。けど、誘われて断ることにも体力を使いそうだ。なにより断ったら、ただでさえ良くない機嫌がさらに下降しようだし。



、組むぞ」



まず選択肢も与えてないからね、この人。当然組むものだと思ってるんだよ、この人。
はぁ、とため息をついて頷く前に、



「ねぇ、糸伸ばして飛んでたのキミでしょ? 俺と組んでよ」

「ありゃ、ごめんね」



一歩遅かったよ、と言おうとして、そこでぷつりと意識が途切れた。
































ぽん、と肩を叩かれたらしい。言うなれば、目が覚めた。そしてすぐに目がぐるぐると回っているような感覚。こめかみに鈍痛。くらくらする。キャパオーバーの症状だ。



「ご苦労サマ」



ひらひらと手を振って去る彼は、そうだ、確か心操君だ。見るのは初めて、だろうか。
そうか、やっぱり。どうしたことか、洗脳にかかっていたらしい。それでもって、彼は遠慮なく私に“個性”を使わせたらしい。地面に座り込みながら、かろうじて繋がっている糸を回収する。それで、何とか頭痛は治まったけど、何だかまだ目が回っているような気がする。気分は良くない。
立ち上がれないでいると、徐に腕を引かれた。険しい顔をした焦凍だ。
ごめんと謝るべきだろうか。まぁでも頷く前だったし、如何せん私、記憶がないので。



「行くぞ」



そう言って私を立たせると、一人でいる緑谷君に「話がある」と声を掛けて、皆の輪から外れた。
腕は掴まれたままで、引きずられよう様に焦凍についていく。緑谷君の困惑に満ちた目に、何と言うべきだろうか。
オールマイトに目を掛けられているってだけで、人の暗い話を聞かされる可哀想な主人公。同情はしてる。出来れば、これからされる話をリアタイで見てきた私が、憎悪成分が大分濃くなった焦凍の背景を聞かされるらしい、ってことに誰か同情してほしい。ただでさえ体調良くないって言うのに。
学校関係者専用入口を陣取って、焦凍と緑谷君が向かい合った。そこでようやく腕を放してもらえて、ずるずると壁に背を付けて座り込む。緑谷君が心配そうに声を掛けようか迷っているのを見て、「気にせず」と軽く手を振った。



「あの……話って……何……?」



本当、緑谷君には同情するよ。可哀想に。けど、助けてあげられないんだ。本当にごめんね。








END

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拍手にて、最新2話が見れないと連絡いただきました。
碓氷のPCとスマホでは問題なく表示されております。とりあえずもう一回上げなおしたので、改善が見られない場合、もう一度連絡いただきたいです。出来れば、どんなエラー表示が出てるのか教えていただけると助かります。
もう一個。
足遅いのにステータス表示でスピードAっておかしくない? ってことですが。
足は絶望的に遅いんです。ですが、“個性”使って移動すると、めっちゃ速いです。そもそも走ってないし。50m走も、ゴール付近に糸括り付けて飛んでおけば、3秒くらいで着くんじゃないでしょうか。ちょっと計算はしてないのでわからんですが。その内計算してみますね。



2017/11/17