07:USJ-後編-











緑谷君が担いでいた先生を蛙吹さんに渡しているのが見えた。
そこでようやく“糸”を飛ばして一気に距離を詰めた。着地したときには既に緑谷君は叫びながら敵に向かって行っていて。けど向かう先には焦凍がいるし、爆豪君と切島君も到着している。



「蛙吹さん、先生は……」

「梅雨ちゃんと呼んで。……意識がないの。怪我も酷くて……」

「……とりあえず、ここから早急に離れよう。出口には今敵はいないから、そこに」

「えぇ」



ちらりと見ただけで、相当酷い。思っていたよりも酷い。応急処置が果たしてどこまで出来るか、という疑問も出てきた。
何とか体に極力負担をかけないようにと気遣って出口付近に運び、横たえる。



「……両腕の粉砕骨折、顔面骨折。うん、眼窩底骨が粉々になってるみたい。流石に脳系の損傷は分からないけど」



完全復活とまではいかないかも。というか目かな。目に何らかの後遺症が残る可能性がある。ただでさえ先生、目に纏わる個性だっていうのに。



ちゃん……」

「大丈夫。いい? 例え聞こえてなくとも、目の前の怪我人に対して不安を煽るような言葉や態度はご法度だよ。もちろん、心配になる気持ちは解るけどね」



蛙吹さんや峰田君が深刻そうな顔でこちらを見てるから、つい。



「『絶対、大丈夫だよ』これ、古くから伝わる魔法の呪文だから。飯田君が助けを呼びに行ったんでしょ? それならもうすぐ応援も到着する。そうすれば今のこの状況が一気に好転する。先生も治るし、心配するようなことなんて何一つない。大丈夫だよ」



軽く“糸”で先生の骨を繋ぎ、止血する。下手に手を出すことは出来ない。
次に13号先生を診る。背中から上腕にかけての裂傷が大分酷い、が、命に別状はなさそうだ。こちらにも止血を施す。
そうこうしている内に、どうやら応援の先生方が到着し、場は片付き始めていた。
遅れて警察も到着し、敵達が連行されていく。
先生方を乗せた救急車の隊員に自分が施した治療内容と経過を報告してからゲートに戻ると、生徒の安否確認が行われていた。
もちろん私も無傷なので、そのまま行きと同じバスに乗せられる。どうやら一旦学校に戻り、教室で待機。順番に事情聴取、という流れらしい。



「尾白くん……今度は燃えてたんだってね。一人で……強かったんだね」

「皆一人だと思ってたよ俺……。ヒット&アウェイで凌いでいたよ……。葉隠さんはどこいたんだ?」

「土砂のとこ! 轟くんクソ強くてびっくりしちゃった」

「なんにせよブジでよかったね」

「それがさー!!」



後ろで尾白君と透の会話が聞こえた。ちらりと隣を見やると、いつもと表情はあまり変わりなかったけど。



「……クラスメイトを凍らすことなく済んでよかったね?」



ついつい茶化してやりたくなったので、周りには聞こえないように小さい声で言ってやった。
ちょっとした嫌味に焦凍が反応を返す前に、背中に衝撃がきた。振り返っても手袋しか見えないから、透だ。



ってば、私がいることに気付いてたでしょー!!」



そのまま後ろから抱き着かれる。女同士だからセーフ、だとは思うけど、一応自分が全裸だってことを今一度思い直してほしい。



「実はってば、見えてるの?」

「まさか。落ちた時、手袋とブーツ見えてたから」



嘘だけど。ばっちり目を瞑ってましたけども。



「何だぁ。まぁ、隠れといて言うのもなんだけど、先に言ってくれたらよかったのに! ってば轟くんとすーぐいちゃつくんだもん」

「そうかな。そんなことないよ」

「えー、だって髪撫でられてさぁ、キスしちゃうかも!ってドキドキしてたんだよー!」

「何それ……」



若干の好奇心が見え隠れする声色に、私も笑い返すしかない。



「もー、前々から思ってたけど、そろそろ詳しくお聞かせ願いたいですなぁ?」

「女子トークかぁ。したことないんだけど、まぁ、その内ね……」



うりうりと頬を突かれる。浮いた手袋に頬を突かれるという図に、ちらりとまるでゲーム画面の様だとバカげたことを考えている内に、バスに乗り込むよう催促された。






























事情聴取は思っていたより早く終わった。それでも帰るころには外も大分日が落ちてきていたけど。
明日は臨時休校になった。「お前ら家からなるべく出るなよ」という意味での休校だ。可能性としては低いけど、敵に襲撃されることを考えたのだろう。後は、学校のセキュリティ強化、だろうか。そもそも通常の休日でさえ、ほぼ家から出ることのない私は、この期に溜まっている録画や積読本を消化しようと決めている。……邪魔が入らなければ、だけど。私の邪魔をしてくるヤツは恐らく昼間は自宅にあるトレーニングルームでのトレーニングに勤しむことだろう。それはいい。好きなだけやってほしい。けれど冬美さんは普通に仕事だし、それを考えるとお昼ご飯を要求される恐れがある。いや、百歩譲ってご飯を作るのは良い。あれは出されたものに文句を言わないから。その後、ご飯食べてじゃあね、と帰るとは思えない。何かしらに付き合わされる気がする。そうなるとちょっと面倒だ。
……とりあえず、先に焦凍の明日の予定を聞いておこう。







END


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葉隠さんとはベストフレンドな感じ。
戦闘訓練からUSJの間で大分仲良くなってるし、これからもっと仲良くなっていく。

ていうか私が葉隠さん大好きなんだけど、他サイトの原作沿い連載であんまり葉隠さんと仲良くなってる話見かけないなーって。
A組の中じゃ一番話し易そうなんだけどな。