06:USJ-中編-








「敵ンン!? バカだろ!? ヒーローの学校に入り込んでくるなんてアホすぎるぞ!」

「先生、侵入者用センサーは!」

「もちろんありますが……!」

「現れたのはここだけか学校全体か……何にせよセンサーが反応しねぇなら、向こうにそういうこと出来る“個性”がいるってことだな。校舎と離れた隔離空間、そこに少人数が入る時間割……。バカだがアホじゃねぇ。これは何らかの目的があって、用意周到に画策された奇襲だ」



先日のマスコミ騒動がここに繋がったわけだけど、あちらの思惑と外れ、オールマイトがいないことは果たして私たちにとって幸か不幸かどちらだったんだろうか。
オールマイトの力の衰えと時間制限を考えると、遅れてきたことによってギリギリもったともいえる。さらに言えば、個々の戦闘経験という面で『良い経験になった』という結果をもたらすことになった。けれどそれが『必要だった』かと言われると、そうは思えない。物語の結果的に、生徒たちに大きな怪我はないとはいえ、先生方はそうはいかなかったし、後々の厄介ごとの始まりでもあると言えるんだろう。……まぁ、だからと言って私に何かできる力があるわけじゃないから、考えるだけで終わるんだけど。



「13号! 任せたぞ」



黙って見ている内に、相澤先生が単身、敵達の中に飛び込んでいっていた。あぁ、嫌だな、と思う。これから大怪我をするであろう先生に、けどどうすることも出来ない自分に。







しがみついた腕はそのままに、小さく声を掛けられた。13号先生による避難が開始されていた。これすらも大した意味をなさないことを知っているけれど、立ち止まって分析を続けている緑谷君を横目に見ながら先生に続いた。



「分析してる場合じゃない! 早く避難を!!」



委員長が緑谷君に声を掛けた。



「させませんよ」



例えば、ここで私が焦凍の腕にしがみついて自分の恐怖心だけをカバーしようとせず、率先して皆に声を掛けて避難を先導していれば。“個性”を使って全員を糸で繋いでおくとか。



「初めまして。我々は敵連合。せんえつながら……この度ヒーローの巣窟、雄英高校に入らせて頂いたのは、平和の象徴オールマイトに息絶えて頂きたいと思ってのことでして」



その言葉に全員の雰囲気が固くなった。



「本来ならばここにオールマイトがいらっしゃるハズ……ですが、何か変更があったのでしょうか? まぁそれとは関係なく……」



そこで黒いモヤモヤが揺らぎ始めた。と同時に13号先生が臨戦態勢に入った。



「私の役目はこれ」



けれど、先生より先に切島君と爆豪君が飛び出して攻撃を始めた。



「その前に俺たちにやられることは考えてなかったか!?」

「危ない危ない……。そう……生徒といえど優秀な金の卵」

「ダメだどきなさい二人とも!」



大して考えもせず、とは流石に言わないけど、無鉄砲にも飛び出した二人のせいで13号先生の攻撃のチャンスを逃させてしまったことに変わりはない。



「……出しゃばり」



黒いモヤモヤが大きく広がった。私達を囲むように広がる。吸い寄せられるような引力を感じる。あぁ飛ばされるな、思い至ると同時に、地を蹴った焦凍にしっかりと抱えられた。万が一にも離れたらまずいので、大人しく首に腕を回させていただいた。
黒いモヤが晴れて目に飛び込んできたのは、土。入り口から見えていた土砂災害ゾーンで間違いなさそうだ。
着地と同時に地面が凍って、待ち構えていた敵達を凍らせた。



「子ども一人になさけねぇな。しっかりしろよ、大人だろ?」



全員を凍らせたことを確認したのか、「降ろすぞ」と一声かけられ、地に足を下した。



「平気か?」

「うん、どこも」



そのまま焦凍は私の無事も確認すると、再び敵達に視線を戻した。敵に尋問を開始した焦凍を横目に、出口の方に目を向ける。委員長が助けを呼びに走ることになるはずだ。出口の扉は遠目だけれど、一応視認は出来る。“糸”を一本飛ばす。これで向こうの声だけは聴ける。
扉がわずかに開いた。きっと委員長が外に出たんだろう。



、縄出せるか」

「……あぁ、話は終わったの?」



要望通りに、糸を寄り合わせて縄を生成する。作った端から焦凍が敵を縛っていく。



「大した情報は持ってなかったな」

「そりゃあ、下っ端に計画を全部話したりしないでしょ」

「そうだな。……行くぞ」



全員をしっかり縛り上げたことを確認してから焦凍が走り出す。
どうしようかな、というのが正直なところだけど、このまま焦凍に付いていくのはあまり良くないだろう。邪魔になるだけだ。それなら最初から出口に向かいたいところだ。ただ直線上で相澤先生が交戦中なんだけど。
何もしない私でも、流石に重傷者を放っておくほど心が腐ってるとは思いたくない。



「……ね、相澤先生……」

「あぁ、分かってる」



一度立ち止まると、不意に髪を一房取られ、そのまま撫でつけられる。
焦凍が口を開くと同時に、出口の扉から轟音がした。そちらに目をやると、扉が外れている。粉塵でよく見えない。



「オールマイト先生が来た……」

「俺はあの噴水の所に向かう。恐らくオールマイトもそこに向かうはずだ。そうすれば相澤先生も救助できるだろ。は先生連れて出口に向かえ」



行くぞ、と走り出す。
そう言えば、ここに透も来てるはずだとようやく思い至った。振り返るけど、残念ながら姿は見えない。



「後でね」



声を掛けてみるけど、聞こえているかどうか。まぁ多分大丈夫だろう。
随分先に行ってしまった背中を追いかけることに集中することにした。







END

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だらだら考えてるだけで実行に移さない。
馴染みの焦凍にだけ、一部を話すけど、かと言って自分の意見を言うのは、嫌。
中途半端なのは分かっているけど、どうするつもりもない。

そこら辺を期末試験で書ければいいな。