たった1日の出来事















インターバル終了後、第2Qで最初にボールを持ったのは秀徳の6番で、そこに黒子君がマークについた。海常との練習試合で黄瀬君を抜いたアレをやろうとでも思ったみたいだけど、それは秀徳10番に止められる。
しっかり録画しております。もうね、黒子君に頼まれたから秀徳10番しか画面の真ん中に映ってないからね。……これ、あとで勘違いされないかな……「おい、あの誠凛ベンチのマネージャー、秀徳の10番ばっかり撮ってね? おいおい私情挟むなよなーwww」……考え過ぎか。

もやーと考えているうちに、試合はどんどん進んでいく。黒子君は悉く秀徳10番に止められ、我がバスケ部はなかなか攻められない。点を返しても、秀徳6番の3Pシュートでどんどん引き離されていく。というかね、ホント、100%の命中率ってマジやばいよね。何なんだろうね、どうやったらそんなん実現できんの、って感じだわ。



「第2Q終了です。これより10分のインターバルに入ります」



外は厚い雲が覆い、ゴロゴロと雷も鳴り始め、大雨が降ってきた。
控え室に戻っても、誰も話そうとしない。まぁ、気持ちが全く分からないでもないが、私は下手に変なことを言ったらマズイというか、士気に関わったら嫌なので、そのままお口チャックである。
しかし姉さんはどうにかしないといけないとでも思っているのか(何かアホなこと考えてる。正邦戦ではチューだとか言ってたし、次は……と顔に出てる)、ぐっ! っと拳を握って、



「……みんなあのね……」

「カントクいいよ!」



言い出した言葉はキャプテンに止められる。
話し出してくれたことで、私も黒子君に近づき、



「これ、前半のビデオね。時間ないし、編集は出来ないんだけど」

「いえ、大丈夫です。ありがとうございます」



そう言って黒子君はビデオを再生し始める。
それに気付いた伊月先輩が声をかける。



「黒子何してんの?」

さんにお願いして、前半の高尾君をビデオに撮っておいてもらったんです」

「! なんか勝算あるのか?」

「え? さあ?」

「は?」

「「勝ちたい」とは考えます。けど、「勝てるかどうか」とは考えたことないです」



そして黒子君は振り返り、



「てゆーかもし100点差で負けてたとしても、残り1秒で隕石が相手ベンチを直撃するかもしれないじゃないですか。だから試合終了のブザーが鳴るまでは、とにかく自分の出来ることを全てやりたいです」



……そんな、落ちるまで形を残しててる隕石なんか落ちたら、相手ベンチどころか自陣も危ない。つーか死ぬ。その前に試合中止だよ。避難勧告出てるって。
というか、それで勝って嬉しいんだろうか。え、相手死ねってことなのかな? 黒子君って結構過激なこというよね。まぁ隕石とかもれなくうちらも死ぬから心中になるんだけど。

まぁ、何だ。黒子君なりのジョークなんだろう。イッツクロコジョーク!
それに釣られて、どうやらみんな前向き? になったみたいだし、一定の効果はあったようだ。
というわけで、後半戦、スタートである。


































とにかく、第3Qは火神君のいうなればワンマンプレーが目立っている。
秀徳6番をそれとなく抑え込めているし、その他の選手へのプレッシャーにもなってるし、実際こっちに点は入っていく。
けれども。



「ファウル黒10番!!」



黒子君が隣で「このままだとマズイ」と言った。
まぁ、そうなんだろうと思う。火神君に釣られてなのか、そもそもの練習量・体力の違いなのか、結構誠凛メンバーはバテてきている。もちろん、火神君も例外じゃないし、秀徳と比べても明らかだった。そして何より、チーム内でバランスが取れなくなっているようである。

第3Q終了後、ベンチに戻ってきた選手は息も荒い。
が、もう火神君の気迫というかもう殺伐としちゃって。私はさっさと救急箱の準備に、後ろを向いた。途端、人を殴る音。



「黒子君!?」

「黒子テメェ!!」



姉さんの悲鳴と火神君の声。
あーぁ、何て思いながら。救急箱の蓋を開けた。



「みんなで仲良くがんばりゃ負けてもいいのかよ!? 勝たなきゃ何のイミもねぇよ」

「一人で勝ってもイミなんかないだろ。「キセキの世代」倒すって言ってたのに、彼らと同じ考えでどうすんだ」



その後、また人を殴る音と、床にぶつかる音。……青春だなー……ははは。脱脂綿買い足さないとな。



「嬉しくなければそれは「勝利」じゃない……!!」



絶対に口に出さないし、顔にも出さないし、態度にも表さない、が。
私としてはこの本当に「青春」じみたものが非常に苦手である。絶対これ将来黒歴史の一つになる。まぁ、火神君に関してはもうそのものが黒歴史だと思うけど。
2度目の学生生活を実行中の私は、痒くして仕方がない。
……そもそも私は勝てればなんでもいい、もしくは何事も勝つことに意味があると思ってる派であるので、その辺も含めて、何も口に出さないんだけど。
姉さんは知ってると思う、が。それにしたってよくもまぁ私をマネージャーに置いたもんだと呆れるけど。まぁ、せっかくのチームワークに水を差す真似はしないが。



「とりあえず二人共、口の中切ったりしてない?」



そう言えば、少しだけ気まずそうに俯いた。冷静に考えたら恥ずかしくもなるだろうよ。こんあ公衆の面前で殴り合い。完全に好奇の目が寄せられてるし。
簡単に頬を冷やせる冷えピタを渡すが、断られた。まぁ、そんな時間もないし。口切ってないみたいだから、いいか。

作戦会議により、黒子君のもう一段階あるというパスの使用が決定した。

有名な「イグナイト」である。……だったよね? ちょっと曖昧で……。









2013/12/28 up...

更新してなさすぎて笑った
アニメも霧崎戦終わっちゃって淋しい……しかしこの話が霧崎まで行くとなると……相当書かなくちゃいけないことに……。