たった1日の出来事















「うっわスキねぇ〜…」

「一本!! 大事に!!」

「じゃない! 格上相手にのんびり合わせてたら主導権プレゼントするようなもんよ! まず第1Q獲る! そのためには…」



今日の天気予報は、夕方から雨。一時的に強い風を伴う嵐になりそう、である。



「挨拶がてらに、強襲ゴー!!」



ニヤリと笑った姉さんを横目に、手に持ったカメラを火神君が映るように調整する。
ちょうど、黒子君からパスをもらい、ゴールを決めようとしていた。



「やった先取点…!!」



ベンチが盛り上がりかけた。が、しかし、緑間君がそれをブロックする。
ボールは秀徳側に渡り、3年の木村さんがレイアップで決めようとするが、これもキャプテンによってブロックされる。両者互いに点を譲らない。

ハウツー本で学んだことで恐縮だが、バスケの試合は、40分。1Q10分×4で区切られている。なので、どんなにそのQが調子良くても、10分間のみ。最低三回は試合の流れを強制的に切られることになる。
現在、試合が始まってそろそろ2分が経つところである。両者共に得点はゼロ。つまり、先制点を取った方が、このQでの流れを取ったも同然、という話ではある。

緑間君のスリーポイントが決まった。秀徳が3点獲得。
これで第1Qの流れは秀徳が取ったものだと、会場中が思った、が、しかし。
黒子君により、コートの端から端まで一直線に横切るパスにより、ほんの数秒で点を取り返す。

この長距離パスによる得点で、試合の流れが秀徳のものなるのを防ぎ、さらに、驚異的な緑間君のパスを封じることともなった。































試合が始まる前、控え室で待機していた時の話である。
トイレから戻ってきた黒子君に、マッサージをしていた時、近くにいた小金井先輩が、唐突に、



「そーいえばさー……」



と、誰に向かって言うでもないような小さい声で呟いた。
誰が耳に止めることもなかったその呟きに、聞こえていた私は、「何でしょう?」と返したのだ。



「いやね、ちょっと引っかかるというかさ」

「はぁ」

「さっき黒子とトイレ行った時に、中で秀徳の1年と会ったんだよね」

「それで?」

「うん、それがさぁ、鏡越しにではあるんだけど、黒子に気づいて挨拶してきたんだよね。その後入ってきた俺にもよろしくーって言ってきたんだけどさ」



何かおかしくない? と首を傾げる小金井先輩に、ちらりと黒子君を見上げた。相変わらずの無表情である。前髪越しに見たもんだからか、目は合わなかった。



「そうですか……」



そこまではっきりとした違和感を言っておきながら、自分ではそれをわかっていない。小金井先輩がたまに分からない。



「傍にいると、逆に鈍くなるんですかね」

「え?」

「同じなんじゃないんですか」



そんなの、私には分かってる。模範解答だって出来るだろう。
けど、私が今ここで言ってしまうことは有りなのか。無しでもどっちでもいいんだけれど。
だからとても曖昧な返事を返しておいた。小金井先輩は、さらに頭にクエスチョンマークを浮かべ、首を傾げたまま。
別にいいのだ。小金井先輩が直接対峙するわけではないのだし。
気になるならば、黒子君であるべきだ。

きっと、傍に伊月先輩がいて、それが当たり前なもんだから、思い至らないのだろう。人間の認識なんてそんなもんなのだ。




秀徳側の、黒子君へのマークが変更され、例の高尾君とやらがつく。
黒子君の戦いは、まさにここから始まると言えるだろう。と、私個人は思っている。

火神君vs緑間君。黒子君vs高尾君。高尾君の言葉を借りるならば、これは「運命」であるらしい。
ぺらぺらとしゃっべている間に消えていた黒子君のパスを、高尾君がはじく。これをスティールというのだろうか。ちょっとまだよくわかっていないのだけど。

高尾君は、伊月先輩よりも視野の広さが上である鷹の目(ホーク・アイを持っているのだ。



「誠凛 タイムアウトです」



ビーッ、とブザーが鳴り、選手が一旦戻ってくる。
姉さんの顔は非常に厳しい。



「ぶっちゃけピンチ」



っていう声が聞こえた。









2013/10/28 up...

ちょっと頑張ってみたけど……どうなんだろう。
花宮ヤバかった@黒バスアニメ