お仕事頑張ってます
4回戦・5回戦と連戦の次の日、授業は滞りなく進められる。試合があったとかそういう事など先生は知ったこっちゃないのだ。
朝、教室で黒子君に声をかけられたとき、「筋肉痛です」と言っていたし、火神君もどことなく動きが鈍いので、きっとそうなんだろう。てことは2年生の先輩もそうなんじゃないかな、と思う。今日の練習が楽しみだ。もちろん私はピンピンしている。当たり前だ。
そして昼休みの現在、私はリコ姉さんに呼び出され、部室に来ている。
「えー、っとぉ、正邦のがこっちの箱でー、秀徳はこっちに入れていい?」
「えぇ」
「ねー、ラベル私作るからさぁ、箱詰めじゃなくってラックか何かに仕舞おうよ。すっごく取り出しにくい」
「ラックねー。収納には賛成だけど、お金無いわよ」
「あーそっか。誰かん家に余ったりしてないかな……」
「聞いてみましょうか。私も探してみるし」
「うん」
箱にそこそこ乱雑に入れてあるDVDを正邦と秀徳のだけ抜き取り、別の箱に入れていく。結構な量がある。
「で、どこに運ぶの?」
「そうねー、スカウティングは部室じゃ狭いし……2年生だけだし、第一視聴覚室で。あ、私運ぶから鍵借りてきてちょうだい」
「はーい」
ダンボール二箱を重ね、姉さんに渡す。そこまで重くはないので、大丈夫だろう。
「あ、そうだ。今日持ってきてるの?」
「ん? あー、パソコン? 持ってきてる。念のため」
「そう。悪いわね。確かケーブルは借りないとダメだから、ついでに」
「うん。借りてくる」
そして部室の前で別れ、私は職員室に。
鍵使用者名簿に組と名前と部活名と使用する教室の鍵を書いて、その後、担任に声をかけた。視聴覚室の担当が分からなかった。言えば、からからと笑って、先生がそのまま手続きと、貸し出しのケーブルコードを渡してくれた。返却も先生でいいとのこと。
礼をして職員室を出て、視聴覚室に向かう。
途中で、ビキビキの体で箱を運ぶ二人と、姉さんを見つけた。
「あっれ。二人手伝ってんの? さっすが紳士的ー。火神君なんてそうは見えないのに、結構フェミニスト精神みたいなのあるんだ?」
「いえ、さん。火神君はさっきカントクに向かって乙女なんてどこにもいないと言ってました」
「何だ。所詮火神は火神か」
「オイ! 黒子! !!」
「全くー、乙女を気遣いなさいよね!」
「ははは」
「何よ。文句あんの?」
「イエ、別に」
視聴覚室の鍵を開けて、中に荷物を入れる。
「今日はこの後使う予定ないって言ってたから、教卓の上に置いといていいと思う」
「そう? じゃあ火神君、黒子君。置いておいてくれる? ご苦労さまー」
「姉さん。鍵は一旦返すから」
「わかったわ。えーっと、練習終わったらまた借りに行ってもらえる?」
「承知ー」
⇔
「わかってたことだけど…正直やっぱキビシーな」
「てかスンマセン。泣きたくなってきました」
正邦のDVD鑑賞スカウティング会が2年生+私で行われている。体育館が放課後使えないので、ロードワークのみとなった部活の後である。
「ハッキリ言って正邦・秀徳とも10回やったら9回負けるわ。でも勝てる1回を今回持ってくりゃいーのよ!」
「…あのさ」
そこで、言いにくそうにキャプテンが言い出した。
「……作戦ってほどじゃねー…けど、一つ思いついた…」
それは、正邦戦はキャプテン達2年生だけでやるというもので。
聞いた先輩達は概ね賛成。その作戦の成功率を上げるため、これから何度もDVDを見て動きを研究することになった。
私の役割は、ひたすらにメモをすることと、DVD操作である。
「ストップ!」
「巻き戻し!」
これを何百回聞いたか。というかそれで足りるのか。
DVDは擦り切れるし、レコーダーはおしゃかになるし。最終的には私の持ってきているパソコンをプロジェクターにつないで、取り込んでおいた動画ファイルを展開させていくことになった。
よかった。パソコンに(っていうか外付けHDに)データ入れておいて!!
しかし……ダメにしたレコーダーはまた買わなければ……ハードオフ行ってこよう。どんどんラックから遠ざかる。私があの部室をきれいに尚且つ私が納得できるように掃除できる日はいつ来るのか。中々来ない。
そして。
予選最終日を迎えた。
END
2013/10/24 up...