お仕事頑張ってます
インターハイ予選は、A〜Dまで4ブロックあり、各ブロックの頂点一校のみが決勝リーグ進出することができる。さらにその決勝リーグで上位3チームに入って初めて、インターハイに出場が叶う。300校以上の出場校から選ばれるのはたったの3校。1%の選ばれた高校生しか立てない夢の舞台。それがインターハイである。
とりあえず、高校バスケのインターハイがなまらヤベーのはわかった。狭き門とはまさにこのこと。
「ただいまー」
「カントク帰ってきたな」
おつかれーと声をかけ、姉さんに近づく。
「海常の時はスキップしてたけどしてねーな」
「カントク、今日はスキップとか…」
「するか!!」
「公式戦でもヘラヘラしてるワケねーだろ」
とす、と姉さんは荷物を床に置いた。部員は周りに集まってくる。
「…にしても機嫌悪ーな。強いのか相手?」
「…ちょっとやっかいな選手がいるのよ。、これビデオ。用意しといて」
「はーい」
「とりあえずビデオはあとで見せるとして、まず写メ見て」
受け取ったビデオカメラを手に、体育館を後にする。
誠凛男子バスケ部は部員も少ないので、大人数入る大2視聴覚室じゃなく、それより小さい大1視聴覚室で十分、集まってビデオ鑑賞ができる。
とりあえず2年校舎でいいだろうと当たりをつけて、職員室で使用許可を取る。鍵を持って借りた視聴覚室に向かう。ビデオ鑑賞の準備を終わらせて、もう一度鍵をかけてから体育館に戻った。
「予選本番は5月16日!! それまで弱音なんてはいてるヒマないわよ!!」
「おう!!」
ガラリと体育館の扉を開ける前、威勢のいい声が聞こえた。やる気が十分で結構である。
「ビデオ準備出来たよー」
「そう! じゃあ今日は練習早めに終わらせてビデオ見ましょう」
⇔
日々はしっかりと流れ、皆はびっしょり汗をかき、ついにこの日を迎える運びとなった。
5月16日土曜日。
インターハイ予選開始の日である。
誠凛バスケ部は8時に試合開場前に集合している。現在時刻、9時半。私は一人、違う会場に来ている。我が誠凛バスケ部はAブロックで一生懸命戦うのである。私は別ブロックの予選会場に来た。何せ4ブロックもあるのだ。決勝リーグではこの4ブロックの頂点に立ったところがぶつかるのだ。先の先を見据えて、姉さんからの指令は、「泉真館のビデオ、コンプリートしてね(はぁと)」である。
私、今、Bブロックの予選会場にいます。いや、泉真館はDブロックなんだけど、安定のシードだったから。その、決勝リーグ出場校を知っているので、情報の少ない桐皇ビデオでも撮るかなーと思いまして。今日初戦やるみたいだし。私の友達にもビデオ係をお願いし、彼女にはCブロックで鳴成コンプリートをお願いしている。私は少しハードだが、桐皇と泉真館は勝ち進んでも日時が被らないので二つ担当。BブロックとDブロックの会場がチャリで移動できる距離で本当に助かった。
いやー、しかし誠凛の制服着て一人、結構目立つ。何かこそこそと小声で「あれどこ校? 会場間違ってるんじゃね?」と言われてんじゃねーかって少し被害妄想しそう。
ていうかね、まぁ自分から言い出したことだし、他ブロックのビデオ撮ってくるって言いだしたのはね。そんな身分で言うのもなんだけど、私、いつになったらウチのバスケ部の公式戦見れるんだろうか。先輩達しかいなかった頃のは見てるんだけど、今年のはこの通り別会場にいるもんですからね、見れないわけですよ。Aブロックの他校のビデオは姉さんの友達が協力してくださることになっている。「ちゃんがAブロックの方がいいんじゃないの?」と気遣っていただいたけど、結局見れないことに変わりないのでお気持ちだけ有り難く頂いといた。
「さーて。気合入れてビデオ撮るかー」
まずは一番綺麗にビデオ撮れるポイントの場所取りである。
30分前と、かなり遅めの時間に到着してしまったのだが、桐皇はまだ注目度が低めなのか、何とか場所が取れた。
三脚にセットして、角度を調整。よろしい感じである。
試合が始まったら録画ボタンを押して、インターバルの度にON/OFFを繰り返す。ただそれだけのお仕事である。録画中は、少くとも私の声が入らないように黙ってるし、これ絶対みんなの前で言わないけど、バスケに興味があるわけじゃないので、正直ヒマなのだが、曲がりなりにもバスケ部のマネージャーになってしまったので、最低限の知識くらいは頭に入れておかなければならない。と思う。というわけで、ハウツー本を開き、目の前のプレーを見ながらお勉強。いやしかし興味ないことって本当に頭に入ってこない。
ていうかね。
実際のところ、私未だにPGとかSGとかそういうポジションも何がどうなのかよく分かってない。お恥ずかしい話ですが……しかし流石にこれは聞けない。ので、本を読むわけだが……まぁ、実際見てみないとね、動きを! ちなみにこのハウツー本やらルールブックは、他校の先輩にかなり馬鹿にされながら本屋で買ったものである。「無いから注文しろ」とカウンターに連れて行かれたのがバスケ部のマネージャーに強制就任させられた次の日である。まぁ、こっちがお願いしたんだけども。でも凄い馬鹿にした目で見られた。思い出すとやっぱり腹立ってくる。
桐皇は初戦、相手校に大きな点差をつけて勝利していた。
桃井さんはかなりの美人である。眼福。
2013/10/21 up...
あの、その、何も言わないでください。
私も少し露骨になってるとは思ってます。だってテンション上がってるから。