三脚デビュー
相田家において、私、「」の認識は「娘」である。何故か。思うに、両親が共働きで、帰ってくるのが夜も遅く、まだ東京にいた幼少期から、相田家に預けられることも多く、自分の家より相田家にいる時間の方が長かったからではないか。いや、私の親ってば本当に忙しくて土日もいなかったもんね。今もだけど。
中学入学とともに東京に戻ってきても、それは変わらず。中学生にもなれば、別に家のことや晩御飯ぐらい自分で出来る。けれど、相田家の人々は、「まぁまぁまぁまぁ」と言って私を連れ出し、相田家の食卓に座らされるのだ。
そんな風に一緒に育てていただいたので、両家のアルバムには、必ずと言っていい程、リコ姉さんと私が一緒に写っているものばかりだ。
「パパー。三脚ってドコにあるの?」
「三脚?」
「うん。が使いたいって」
「お邪魔しまーす」
海常との練習試合でビデオを撮ろうと思い立ち、それにはブレが少なくなるように三脚を使うべきだと考えた。確か相田家には三脚があったはずなのだ。使っているのを見た記憶がある。
ビデオカメラは家にあった。
「おお、たんおかえりー。晩メシは?」
「……えーっと、何にするかは考えてあります」
「じゃあ食ってけるな。今日も遅いんだろ? 二人とも」
「あ、昨日から出張で二人ともいません」
「そういうことは早く言わなきゃダメだろー? さ、座れ座れ」
ナチュラルだったし、私も流したが、リコパパは私と姉さんをほぼ同じ扱いをする。前に、高校の入学式の後、相田家で夜ご飯を食べる約束をしており、制服姿でお邪魔したところ、部活から帰ってきた制服姿の姉さんと並ばされ、「天使が二人いる……」とシャッターを切りまくっていた。
その時の姉さんの表情と言ったら……ナイ。なまら苦々しかった。
「今日はー……」
座らされ、相田家の食卓に混ざる。リコママが「ちゃんと食べるの久しぶりねー」なんて言ってニコニコしてる。前、ご飯一緒させてもらったの、三日前なんですけど。
ていうか、晩御飯食べてこればよかった。荷物置いて着替えてすぐ来たからな。次からは気を付けよう。
「のパパとママ、一週間いないって言ってたから、しばらくは一緒よ、ママ」
「あら、そうなの? じゃあ明日は私がスペシャルメニューを作ろうかしら」
「いえ、お気持ちだけで結構です」
相田家にはポイズンシェフが二人いる、それすなわち、リコ姉さんとリコママである。
「三脚を何に使うんだ?」
「明日の練習試合を録画するのに使いたくって」
ご飯後、三脚を出してきてもらい、それを受け取った。
「お! リコたんの勇姿を……?」
「いや、バスケの」
「あー、たんはマネージャーになったんだもんな? 三脚で固定しておけば、天使がちゃんと二人とも映るもんな。流石、頭いいな!」
「いや、だからバスケ……」
「でも固定カメラだけじゃ動きを全部追えないだろ?」
「あー、それは確かに。もう一台は手で持って……」
リコ姉さんは撮らないけど。
でも後で何か言われたら面倒だから、デジカメ持って行って写真撮っておこう。
END
2013/10/25 up...
あまりよくキャラが分かっていない。