マネ()デビュー











「100対98で誠凛高校の勝ち!!」

「ありがとうございました!!!」



言うなれば、よくわからなかった。バスケのルールにあまり明るくなく、どういう状況でどうなのかとか、今火神君がやった技は何なのかとか、全部手元のハウツー本を見ながら、ビデオが録画されてるか確認しながら、とにかくスゲーと感じた時にデジカメでパシャパシャ学校関係なくやるので忙しかった。
そういえば、私は黒子君や火神君がバスケをしているのを実質初めて見たわけだが……とにかく、素人目に見ても迫力があったことだけは言っておきたい。
ずっと2階席というか、上の観覧席でビデオを回していたのだが、黒子君が頭を負傷した時に下に降りて手当し、黒子君が復帰するまではベンチにいたので、間近で試合を見ることも出来た。
黒子君が血を流してしまい、笛が鳴った時、すぐに姉さんが「!! 救急箱持ってきて!」と叫んだので、少々注目を浴びながらもベンチに急ぎ、前日に多めに用意しておいた包帯を救急箱から取り出した。



「とりあえず黒子君、横になってもらえる? あ、ベンチの上に」



頭から血を流している黒子君はフラフラしているし、やっぱり少し血の量が多い。



「血が止まんないことには試合には出せないでしょ?」



と姉さんに振り返れば、姉さんはそうね、と頷く。その表情は硬い。一応ガーゼでしっかり止血し、包帯で抑えているけど、頭を怪我したわけだし、下手なことはさせられないのはもちろん承知済みなのだが。



「黒子君はもう出せないわ。残りのメンバーでやれることやるしかないでしょ!」



ベンチにいる1年生の顔は引きつっている。



「OFは二年生主体で行こう! まだ第2Qだけど離されるわけにはいかないわ。早いけど「勝負所」よ日向君!」



というわけでキャプテンのクラッチタイムをしっかりと見ることができた。
そうして誠凛は好プレーをするわけだが、やはり海常相手には厳しい。姉さんが苦虫を噛み潰したような顔をしながら解説をしてくれる。



「…前半のハイペースで策とか仕掛けるような体力残ってないのよ。せめて黒子君がいてくれたら…」



フラグである。



「…わかりました」

「え?」



ムクリと起き上がった黒子君に、姉さんがぎょっとする。



「おはようございます。…じゃ、行ってきます」

「「いやいやいや!!」」



流石の私も止めねばならない。だって怪我してるのだ。



「何言ってんのダメ! ケガ人でしょ! てかフラついてるじゃない」

「? 今行けってカントクが…」

「言ってない! たらればがもれただけ!」

「…じゃ出ます」

「オイ!」

「ボクが出て戦況を変えられるならお願いします。…それに、約束しました。火神君の影になると」



この黒子君の言うことに思うことがないわけじゃないが、私が口出すことじゃないので、黙っておく。



「……。アンタから見て黒子君の怪我は……?」



そう振られるとは思ってなかったので、完全に油断してた。
黒子君も、「さん、お願いします」と何故か姉さんによりも殊勝な態度である。私に決定権はないのだけど。
ちょっと失礼、と軽く包帯に触れる。



「……まぁ、血は止まってるみたいだし……後そんなに時間あるわけじゃないから、無理な事はないとは思うけども……」

「わかったわ…! ただし、ちょっとでも危ないと思ったらスグ交代します!」

「ありがとうございます。さんも」



姉さんがそう言って、交代の準備をしている間、気休めだけど、もう一度包帯を巻き直すことにした。本当に気休めである。



「……本当に無理しないように。具合悪くなったり不調を感じたらすぐにリコ姉さんに合図してよ」

「はい」

「試合終わったら、病院ね」



そして見送ったあと、回しっぱなしのカメラの元に戻ったのだ。
最後、火神君がブザービーターで点を入れ、試合終了。
姉さんは晴れやかな顔で海常の監督さんに挨拶していた。姉さんは根に持つのだ。しっかりと仕返し出来てご満悦のようで、何よりである。



「じゃ、病院行くかー。近くに総合病院あるし、日曜日もやってるみたいだからそこ行こう」



姉さんに、調べておいた病院の情報を見せる。



「そうね。黒子君!」



ちょうど、海常の校門付近にリアカーを繋いだ自転車が見えた。あぁ、アレかと思い当たるものがあったが、私には到底関係ないので、早々に視線を黒子君に移そうとして……失敗した。普通に見失った。
そして、「ここです。さん」と真横から声をかけられ、かなり驚かされることになる。











2013/10/18 up...