黒子ドッキリの話
つーか、こんなにも影が薄いとは思わなかったのだ。ミスディレクションじゃないよ普段からそれはないよむしろそれって、ステルスじゃねーの。能力名:ステルス。これだよ。
授業中にプリントの配り忘れられるなんて当たり前。体育の授業で、ペアの子が黒子君を捜索するのも当たり前。掃除当番で、ちゃんといるのに、傍にいるのに「黒子君どこー?」……当たり前。
こんなの、あんまりじゃないか。あまりにも酷いじゃないか。
だから私は、ついつい「主人公だし」ということで黒子君を探してしまっていたので、忘れられたときは「せんせー、一人飛ばしてますよー!」と教えることにしたのだ。
が、
これがよくなかった。いや、傍から見たらいい事なんだろうけど、作戦K(関わらない)を実行したい私としてはいいことじゃない。むしろまずいことだ。
黒子テツヤに目をつけられた。
いや、別に黒子君は不良じゃないし、私を体育館裏に呼び出して「なんじゃワレェ」とかやってくるわけではない。そうじゃない。
何か、こう、ですね。
行くとこどこにでも黒子君がいるのだ。
図書室・購買エトセトラ……。日直で職員室や教材室に物取りに行けば、
「さん、手伝います」
図書室で本を探していれば、
「さん、探してる本の題名は何でしょう? ボクも探します」
昇降口で上履きから履き替え、帰ろうとすれば、
「さん、気をつけて帰ってくださいね。さようなら」
こんな感じである。
何かもう、SAN値がガリガリ削られてる気分だ。
しかも最近は、リコ姉さんがバスケ部マネージャーにする云々と言って焚きつけるから、休み時間に
「さん、今日も体育館に来てくれないんですか」
だの、
「さん、バスケ部に行きましょう」
と言ってくるのだ。もうやめて……私のライフは0よ……。
しかもさんさん……いい加減ゲシュタルト崩壊しないもんか。
こうして一生懸命、私に話しかけてくる黒子君の意図が分からない。何でだ。どうしてこうなった。
思い当たるのは、授業中などの「せんせー、一人飛ばしてまーす」だが……あぁそうか。影の薄いのによく気づく私を訝しんでいるのか……。黒子君暇だな!! いやホントにな!!
しかし私が黒子君に気付けているのは、授業中とかに限られ、というのも、黒子君のことを気にしているからだ。主人公だし、ただのクラスメイトよりは印象が強い。さらに、別に黒子君は意識してミスディレクションしてるわけじゃなく、ただ単に影が薄いだけである。気をつけてればすぐに分かる。だから、何も考えずぼー、っとしている時なんかは全然気づけない。当たり前だ。年がら年中一日中黒子君のこと考えてるとかそんなことはないからだ。
とにかく、突然現れてものすごく驚くので、私はこれを黒子ドッキリと呼んでいる。
マネージャーに就任した後も続いているんだが、どうすべきなんだろうね……ホント。心臓に悪い。
2013/10/22 up...
主人公は鈍いわけじゃなく、そこに思い当たらないだけ。
黒子は別に訝しんでいるわけじゃなく、気づいてくれて尚且つ進言してくる主人公にささやかなお礼のつもり。気づいてくれて嬉しいから。