入学式の話













うっわぁ、まじかー。



4月。私は無事高校一年生になった。今日は記念すべき入学式である。母が参列予定だ。
新設校なので、まだ綺麗な校門や校舎を視界に収めながら、昇降口前に立てかけられているクラス発表を見る。
ちょっとした特技で、私は自分の名前を見つけるのが早い。さっさと自分の名前と所属のクラスを確認した後、まだ時間に余裕があったので、自分のクラスにどんな人がいるのか、知ってる名前はあるか、友人はどこのクラスか、定番に探すことにした。
ぼけー、っと眺めて、結構最初の方で目を疑った。



火神大我
黒子テツヤ



何の冗談だ、と何度も見直した。けど、文字が変わることなく。
まぁ、理解しがたいということでもない。何故ならここは誠凛高校だ。主人公の通う高校なのだ。そして同い年だ。同じクラスになるということは、可能性として十分有り得ることである。わかってたことじゃないか。もう、3日前には「if」の出来事について色々なシュミレーションをしたじゃないか。大丈夫大丈夫。作戦Kだ。関わらない。それで十分じゃないか。何も問題などない。


教室に入って、ぐるりと見回す。クラスメイト達は一瞬私を見るが、初日だし、余所余所しい。まぁ、当たり前である。適当に「おはよーございます」と言って、出席番号順に座る。
見回したとき、既に黒子テツヤは席に座っており、ぱちりと目が合ったので、とりあえず愛想笑いして会釈しておく。作戦Kったって、最低限の礼儀は必要だ。

席に付けば、前の席に座っていた女の子(初対面)が話しかけてきて、自己紹介なんかをしながら、心の中は大嵐だった。



まじかーまじかーまじどうするよーっていうかないわー。いやいや希望は捨てるな。大丈夫だって前向きに考えていこーぜ。



なんて自分を励ましているうちに、今度は火神大我が入ってくる。見た目でかなり注目を浴びて、前の席の子が「なんか、怖そうな人だね」とこそっと言ってきた。見た目はそうでも、中身はバカだがな。なんて言うわけもなく、「そうだね」とだけ返しておいた。クラスでは大人しく。大人しい人って言えばー? さーんって言われるくらいには大人しくしている。小学生の時からそうだ。それが私の世渡り術だ。
しかし、スマフォに着信されたメールの差出人に頭を抱えたくなる。



『今日、HR終わったら、体育館お・い・で(はぁと)』



リコ姉さんだ。マジであの人は私をマネージャーにする気か。昨日、「バスケ部に入らないよ」ってちゃんと言ったのに。自分が聞きたくないことは覚えてないんだから、全く。



『入学式後は母さんと一緒にこっちにいる親戚に挨拶回りだから無理。つーかバスケ部入んないって言ったっしょ』

『それはしょうがないわね。明日も放課後やってるから来てよ』



水掛け論になりそうだからやめといた。後でまた直接言おう。
そしてもう一件。



『入学おめでとう! も今日から高校生だな!!』



あんたは父親か、というツッコミを思わずしてしまいそうだ。



『ありがとうございます。先輩もリハビリ頑張ってください。学校で会える日を楽しみにしてます』



木吉鉄平先輩である。現在はリハビリで休学中だ。この先輩も、私がバスケ部に入ることを何一つ疑っていない。もう部員だと思っている節がある。天然なのか養殖なのかわからないが、この人はリコ姉さん以上に話が通じないので、最早放置だ。



「じゃー出席番号順に自己紹介してってくれー」



いつの間にか担任がやってきて、入学式前の諸注意と自己紹介が始まる。
火神大我の気ダルそうな自己紹介のあと、予想通りすっ飛ばされる黒子テツヤ。流石に見かねて、「先生、一人飛ばしてます」って言っちゃったが、まぁ、許容範囲内だろう。



です。よろしくお願いします」



とにもかくにも、1年間このクラスでやっていくのだ。頑張ろう。いや、頑張れ私。







2013/10/22 up...

木吉出したくて……。