気持ちと心臓の関係




















入学が少し遅れた彼女の傍にいるようになってからしばらく経つ。
最初は、彼女が周りと違って好奇の目で見てくることも騒ぐこともなく、静かに過ごせて落ち着けるからだった。どうにも煙たがられている節があったが、とりあえず何も言われてはいない。
考え方も行動も、アカデミーの仲間達とはかけ離れていて、どちらかといえば先生方により近いように感じる。
……のご両親は亡くなってしまったから、その影響があるのだろう。


の傍にいると、心臓のあたりが苦しくなるようになってしばらく経つ。
最初は気のせいだと思ってた。けど、どんなに誤魔化しても、これがなんなのか分からないと恍けることはできなかった。
が楽しそうに笑ったり、オレに向けて手を振り微笑むだけで高鳴る胸の原因なんてすぐに分かった。無視なんて出来そうになかった。そもそも、無視する理由もなかったのだが。別に許されないわけじゃない。邪魔されるいわれもない。

この気持ちが「好き」なんだと知った。初恋だ。
初恋は叶わないとよく言うが、そんなもの関係なかった。叶える気しかない。
しかし。



「イタチ。モテるって大変だね。超ガンバっ!」



は結構ひどいことを平気で言ってくる。
オレとが付き合っているという噂があるのは知ってる。噂が確かなのか誰もオレに聞かず、皆に聞きにいく。オレに聞いてくれればいいのに。に聞いたら否定されるに決まってる。だからアカデミーでずっと傍にいるようになった。そうすれば、噂の助長に繋がるし、オレ自身の傍に陣取っていられる。一石二鳥だ。
オレの両親、特に母さんはを非常に気に入っていて、よの話題を口にする。毎日のように家に連れて来いと言うのだ。
これで、何一つ障害などないはずなのだが、ただ一つ。張本人が障害となって立ちはだかっているのだ。こんなに周りから埋めていっているのに気付きもしない。果てには他人事だ。俺の気持ちに気付く素振りさえ見せない。
どうすればに届くのか。大分遠く感じる。長期戦になるんだろうか。けれど、あまり長くなると辛い。
心臓が痛いのだ。それに不安だ。早く自分のものにならないと安心できない。実際、は大人びているから人気なのだ。それをいまいち本人はわかっていない。オレとその他の扱いが全く同じで、それも嫌だ。特別になりたい。

は隣で美味しそうに弁当を食べている。
その弁当は母さんがの分も作ったものだ。一人暮らしを心配してだ。この後、を夕食に誘うつもりだ。一緒にオレの家まで帰って、時間まで近くで宿題でもすればいい。
……こうやって誘うのはだけだっていうことさえも気付いていないんだろうな。



「……モテたところで、本当に好きな人に好きになってもらえなければ意味なんかないだろう?」

「おお、真理だね。確かにその通りだよ。まぁでもそこらへんは心配しなくてもいいんじゃないかなぁ……イタチに好きって言われて断る人なんて1割もいないんじゃない?」



どうせその1割の中はいるんだろう。
さっさと好きだと言ってしまえばいいはずなのに、言えないのは、がオレを好きと思ってるか判断つかないからだ。
以前、別のやつがに告白してバッサリと振られていた。正直、振られたとして諦める気は毛頭ないが、出来れば断られたくないっていうのは当然の心理だろう。



「そういうこと言うってことはイタチ好きな人いるんだ? で、もしかして脈ナシ? 相当だね、その相手。他に好きな人がいるのわかってるとか?」

「……いや」

「付き合ってるとか……あーこんな年齢で恋人いるとか爆発すればいいのに……あ、ごめんつい」



もう一つ。
どうやらの中では適正年齢があるらしい。それが何歳からなのかがわからない。聞いてみても曖昧にぼかされる。
最近では、実はオレの気持ちに気づいてて、わざとなんじゃないかとも疑っている。考えすぎだろうか。



「まぁ、焦ることはないよ。人生はまだまだ長いんだし。80年生きるとして、まだ4分の1も生きてないんだし。時間はたくさんあるからさ」

「そうだな」



いまいち判断がつかなくて困っている。








                       to be continued......







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イタチ視点て言われて、あーなるほどー! と思いさっそく。
しかしイタチ兄さん難しいな……。




    2014/06/23