正解だなんて、考えるだけ無駄だ


















「姉ちゃん姉ちゃん! そんで、俺ってばこう、影分身の術をしてだな……」

「……もうソレ、聞くの5回目なんだけど……まだ話すの……」

「姉ちゃん!!」



私には、5歳下の弟がいる。もちろん、血は繋がっていない。7歳の時に、私の元にやって来た。名を、うずまきナルトという。うん。主人公だよね。
7歳と言えば、私は何故かアカデミーを卒業させられ、イタチと同じ班になり、「あーもう何か神様って私にどんな試練を与えようとしてんのかマジ分かんね。っていうか私をどういう方向に持っていきたいだろう疲れてきた」と殆ど自棄になっていた頃だ。10月10日に2歳になったナルトは、そんな私のところにやってきた。下忍としての任務で、木ノ葉の孤児院にやってきたときに、ミカド・イタチの2人は体力の有り余っている同い年くらいの子達の相手をさせられ、私と先生はもっと小さい子達の面倒をみた。
その時、初めてナルトに会った。その後、どういう経緯か詳しく思い出したくはないので簡潔にまとめると、ナルトが私に懐いたようで、泣き喚いてしょうがないから、世話を任されたのだ。何かもっと大人の事情とかあったかもしれない。家には私しかいなかったし、三代目が「一人は寂しいんじゃない?」的なことを言ったからかもしれないが、まぁとにかく私のところにやってきたわけだ。

さて、ナルトを引き取ることになった私は、7歳の子供に2歳のガキ(しかも人柱力)を育てさせるって里は何を考えてんだよ頭湧いてんじゃねとか思わなくもなかったが、先に言ったように、私は自棄になっていたので、もう原作とか知ったこっちゃねーと言わんばかりにナルトを育てることにした。ナルトが私のところにやってきた時点で、もう同じようになんかならないのだ。全く、どうするんだよ。ナルトに孤独感とかそういうの、なくなっちゃうじゃねーの。そういうのがあるからこそのナルトの成長じゃねーのとか思うんだけど。まぁ、流れに身を任せます。みたいな。
結局、ナルトはあんまり変わらなかったように思う。好物とか、目標とか。私が育てても、周りのナルトに対する目は大して変わらなかったからかもしれない。
けど、それでも変わったことはある。私が思う、大きな変化は、ナルトとサスケの関係だろうか。
私とイタチが同じ班であることも手伝ったかもしれないが、ナルトとサスケはアカデミー時代からの友達で、というかお互い親友ポジションに落ち着いていた。イタチが抜け忍とならなかったからなのか、サスケは原作より丸くなっていたし。



「つーか、ナルト。アンタ不合格じゃなかったっけ」

「見ろってばよ! この額当て!!」



さっきまでナルトはアカデミー卒業試験に落ちて寂しくブランコを漕いでた気がするんだが。
あぁ、でも確か覚えてる話だと、ミズキに唆されて秘伝の巻物盗んでなんやかんやで影分身の術を覚えてイルカ先生に合格を言い渡されたんだっけ。だから今もそんな感じで合格なわけか?
いやぁ、保護監督者として申し訳ない話だけど、3日くらい前からずっと職場に詰めてて、全然お外の様子知らなかったんだよね。
昼ころにナルトが悔しそうな顔で訪ねて以来どうこう知らなかったんだよねサーセン。



「まぁ、これで晴れて卒業ってわけだ? ラーメンでも連れてってやろうか?」

「マジで?! あーでもこれからアカデミーで説明会だから、その後行くってばよ!!」



絶対約束だってばよ! とナルトは叫んでバタバタと出て行った。
そう言えば今は朝だった。昨日の今日でナルトってば元気だこと……。
アカデミーで説明会ってことは今日カカシ先生に会うわけだ。で、サスケやサクラと同じ7班になる、と。
ナルトの成績は原作と変わらず、ドベ。サスケとの仲くらいじゃないか、違うのって。親友ポジだけど、お互いライバル意識みたいなのはあるみたいだし。まぁ、どうせ上手くやるだろう。



「……今日の晩はラーメンかぁ」



みそかな、と考えていれば、またドアが開いて人が入ってきた。朝だってのに、随分みんな暇なんだな、と思って振り返る。
つい、眉間にしわが寄るのを感じた。


「おはよう、。あんまりじゃないか、人の顔見て顔を顰めるなんて」

「イタチって暇なの?」

「今日、俺の家で夕食一緒に食べないか?」



会話が噛み合わない。イタチは最近、とみにこうだ。言いたいことをさっさと言ってしまう。



「……何で」

「昨日、アカデミーの卒業試験だっただろ? サスケもナルト君も無事合格したから、祝いを」

「いや、遠慮します」

「何故? 昨日はやってないだろう?」



どうせ昨晩の騒ぎを知っているんだろう。それでこんなこと言い出したんだ。



「サスケやナルトは一体どんな子と同じ班になるんだろうな」



一緒の班になるよ。とは流石に言えない。先生はカカシ先生だよ、とも言えない。



「……さぁ、どうなるんだろーね……」

「なんだ、気にならないのか?」

「いやぁ……」



知ってるし。



「……ナルトならどんなとこでもやってけるって信じてるから……」

「なんだ、その白々しそうな顔は」

「いや、別に」

「けれど、二人が同じ班になったら面白いな」



ははは、と笑ってるイタチに冷や汗をかく。こいつ、たまーに鋭く当ててくるんだよなぁ。
そうだよ当たってるよ。二人は同じ班になるんだよ。



「そ、そうだね……」



そのままイタチは楽しそうにサスケとナルトの小さい頃の小競り合いの話を話し始めた。
そう言えば私、徹夜明けで、これから寝ようと思っていたところだったんだった。イタチの話はまだ続きそうだ。



「……ねぇ、私もう寝たいんだけど」

「徹夜したのか。……隈は出来てないな」



さら、っとイタチの指が目の下をなぞる。
こう、イタチは何か知らんが軽いスキンシップが多い。この顔でそんなのやってたら勘違いする子が大勢いるだろうに。



「隈とか……まだ年齢的にも無理しても大丈夫な頃だし。それより、お祝いって昨日そっちはやったんじゃないの」

「昨日は俺も父上も仕事でいなかったからな。一日遅らせたんだ。だからナルト君も一緒にどうかと思って。母さんもに会いたいって言ってるよ」

「お祝い、ねぇ……」



私にとって、アカデミーの卒業なんて祝うようなもんじゃない。
そもそも私の場合、7歳で卒業させられらるなんて、まさに晴天の霹靂。全く予想してなかった。
担任の先生に、試験の1週間前に、「お前、ちょっとこれ書いてこい」と原稿用紙の束と本を渡された。課題らしく、本を読んでその要訳と論考を書いてこいとのことだった。私は暇だったので、本を一日で読み終わり、要約を終わらせ、3日後には論考も終わったので、先生のところにもっていった。
試験の当日、先生に呼び出され、筆記試験の会場に連れて行かれ、「試験は受けるだけ自由だからやってみろ」と言われたので、はぁそうですか、とそれに従った。結果は、満点だった。
最後に、職員室に呼び出され、「合格おめでとう。これで晴れてお前も木ノ葉の忍だ!」と額当てを渡されたのだ。
私はもう、顔が引きつった。気絶するかと思った。



「……私みたいなのを、しかも7歳で卒業させるなんて世も末だな、って今でも思うわ……」

?」

「天才:生まれつき備わっている、並外れてすぐれた才能。また、そういう才能をもった人。ばい大辞泉。ミカドやイタチみたいな天才と一緒にされて。神様ってのはとことん私をいじめたいのかな、って思う」

だって秀才だと言われてるだろう」

「違う。凡才、よ。平凡で、特にすぐれたところのない才能。また、そのような才能の人。秀才ってのは非常に優れた学問的才能。またその持ち主のことを言うの」

は難しく考えるんだな」

「つまり、私は取るに足りない人間、ってこと。イタチみたいに私のことを秀才っていうのは、幼い子供にしては馬鹿みたいに狡かったのを賢いと勘違いしただけ」



額当てと一緒に、何かの推薦状のようなものと誰かの名刺を渡された。その名刺の主が、私の卒業に一役どころか、二役三役はかったそうだ。
そしてその人は、現在私の所属する研究チームの所長だ。つまり上司。



は自分を卑下しすぎだ。ミカドもいつも言ってるだろう?」

「まず貴方たちはいかに自分達が優秀なのか認識する必要があると思う。このチートめ」

「また、そうやってはオレらにわからない言葉を使う」



ほら、と腕を掴まれ立たされた。



「イタチ?」

「母さんから買い物を頼まれてるんだ。ご馳走を作ると」

「……それで、何で私……」

「早く買い物終わらせたら、ベッドを貸してやる」

「いや、私自分の家にちゃんとベッドあるし」



別に借りなくてもいいんですけど。
これってアレでしょ、もう拒否権ないんでしょ。
はぁ、とため息がこぼれた。



「ねぇ」

「……どうした?」

「…………今でも根に持ってるんだからね。卒業試験のこと」

「……だから、それは悪かったと何回も言ったじゃないか」



私は実技試験が免除された。理由は二つ。筆記試験・論文等が非常に優秀な成績を収めたことと、推薦者があったからだ。推薦者は数多く、先生方の中にもいたし、上司もそうだ。後で聞いたときに、その中にイタチもいたというのだ。
先生方も、イタチと、先に卒業が決まってたミカドと同じ年で私を卒業させれば同じチームにできるじゃん、と思いついたのだろう。



「私、あの時にほぼ人生決まったも同然だったんだから」



もちろん、全部がそうだとは言わないけれど。ちょうどいい所に八当たれる対象がいるんだからしょうがない。
卒業が決まった日、職員室を出た後は、名刺の人に会いに行った。そこで、「じゃあこの本読んでおいてね」と分厚い本を5冊渡され、私はその日からひたすらその本の内容を消費することに時間を費やした。



「まぁ、別に責任とってくれなんて言わないから安心して。……あの日、まだまだ知らないことばかりだなぁ、って本を読みながら思ったの。勉強したりないなーって。馬鹿みたいにガリ勉みたいなこと考えちゃって。睡眠時間削って読み耽っちゃった。だから、卒業なんか祝わなかった。自分で祝うのも……何か、ねぇ? 私としては祝えるほど頑張った気もしなかったし。ねぇ、そう言えば私、イタチの卒業も祝ってないんじゃない?」

「どうだったかな……あまり覚えてないよ。あぁ、そうだ、。それなら」



イタチが微笑みながら、いいことを思いついた時の少し弾んだ声で提案をしてきた。



「サスケとナルトにあやかって、お互いを祝おう。もう10年も前の事ではあるんだけど」

「10年かぁ……年とったなぁ……。いや、まだ10代だけどね? あぁでも10年か……。10年前はそんなに差無かったのに、今じゃイタチとかなり身長差あるしねぇ。ナルトだって伸び盛りだし。あぁ、本当に嫌だ。ねぇ私、身長160無いんだよ。なーんで身長止まったかなぁ」

「オレまだ伸びてるな」

「今何センチ?」

「175、かな」

「後2センチ!! 177になったら教えてよ。私、男の人は177センチが理想的なんじゃないかと思ってるんだよねー」

「……それ、前にミカドにも言ってただろ」

「ナルトにも言った。男は177センチがいいんだ、って。イタチさぁ、顔いいんだし、目の保養になるんだって。私の研究チームの男共なんて、みーんな目の下にクマ作ったり、普段から疲れた顔してんだから。愛用は栄養ドリンクだし」



上司は涼しい顔してるけど。



はあまり疲れてるように見えないな」

「……疲れてないの。家事はナルトがそこそこやれるし……まだ18だからね。3日4日くらいの徹夜なら平気」



元々睡眠時間はナポレオン並みに少なかった。辛ければ額に冷えピタ貼れば解決するし。
出来のいい弟がいてよかったーって本当に思う。



「研究やりがいあって楽しいし、結局はこれでよかったんだと思う。私の人生間違っちゃいないんだよ」

「……それはよかった」



うん。よかった。
イタチやナルトやミカドが居てくれて、私は本当に幸せだ。



「あ、晩は一楽連れてくってナルトと約束してたんだった」

「明日連れて行ってやればいい。今日はウチで、な」







                             To be continued......








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年齢が上がるごとに、主人公のやさぐれ度は下がっていきます。慣れとか諦めとかのおかげですね。







                               2011/10/06




書き直しました。
やっぱナルトは一回不合格になってないとな、と思って。


                                2014/06/18