探偵達の鎮魂歌









「3時間以上も待つんだ?」
「もー俺待ちくたびれちまったぜ……」



まずは、何とかしてスーパースネークを諦めさせないといけない。けど、もうこの時点で大分難易度が高い。



「お腹減ってきてない? 園内凄く混んでるし、早めにお昼食べに行くのもいいし、軽くつまめるものを調達してくるのもいいと思うな。 せっかく無料のIDあるんだし、色々食べてみたくない?」
「俺ポップコーンとフランクフルト食いてー!」
「けど、並んでないと……」
「じゃあ私が並んでるわ。貴方達行ってきなさいよ」
「でも灰原さんを一人にするわけには……」
「何人かで分かれていけばいいんじゃないかな? さん、どうですか?」
「うん。そうしよっか。哀ちゃんを一人にするのは保護監督的に拙いから、私も一緒に残るね。蘭ちゃんは他の子達をお願いしても?」
「分かりました! じゃあ、皆行こっか」
「はい! ありがとう、お姉さん! 哀ちゃん!」
「いえいえ」



そうして子供たちを見送って完全に見えなくなった。



「お先、どうぞー」



哀ちゃんの手を握って、列の最後尾に移動する。



「……貴女、知ってるのね?」
「あぁ、まぁ、うん……。哀ちゃんも知ってるの?」
「えぇ。江戸川君から」
「そう言えばコナン君いないね……毛利さんに着いてってるんだ?」



どうやら哀ちゃんもこのフリーパスの事を聞いているらしい。一人で何とかしなくなっても大丈夫になったとはいえ……。



「はぁ、これでいつまでもつかなぁ……」
「そうね……」



まだ日は高く、12時を回ってすらいない。
頼むから先輩、どんな依頼かは知らないけど早く終わらせて迎えに来てほしい……。























依頼人から最初に伝えられたヒントは『TAKA3-8』。再開発前の地図を調べ、該当住所についた安室は物陰から様子をうかがっていた。
廃墟になったホテルの入り口前には、恐らく毛利小五郎がレンタルした車が停まっているし、恐らく彼らが与えられたヒントも同様のものだったのだろう。
何事もなければ、このまま二人と合流するのも悪くない、と考えていたのだが、廃墟の前には背広姿の男が4人。そしてホームレスであろう男。どうにも毛利探偵達が怪しいと思われているらしい。4人の強面の男たちは刑事の様だ。依頼人から「警察に駆け込んでも無駄」と言われている。恐らく警察署に行けば爆破される可能性がある。ここで出て行って、自分も一緒に警察署に向かわされるのは得策じゃないだろう。
ホームレスの男が刑事に話している、毛利探偵たちに教えた内容……4月4日に白い大きな鳥が飛んできたこと、朝から変な車が停まっていたこと、夕方には車が変わっていたこと、不動産屋が地下室を閉めていったこと……恐らく逃走車を乗り換えでもしたのだろう。大方強盗か何かだ。地下室を閉めたのは、証拠品を隠したか……。4月4日に強盗関連で何か事件がないか調べてみればいいだろう。



「さて、行くか……」



携帯にメールで資料が届いた。
4月4日に銀行で現金輸送車が襲撃される事件があったらしい。まずはその銀行に向かうことにした。その時、頭上を黒い影がよぎる。



「あんときと同じでっけぇ鳥だ……」


後ろからホームレスの声がした。
太陽の下を通過し、光を背に受けたシルエットから純白のハットが浮かび上がった。――怪盗キッドだ。



「警部! キッドを視認! 現在深山ビルの屋上、悪魔像の上です!」



怪盗キッドはマントを翻しながら悪魔の石像の上に立った。
腹心の部下に再度メールを入れた。4月4日に怪盗キッド関連の事件があったかどうかと、その詳細を調べるように、と。





END
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2018/06/22