No/Knows;U

Aspettazioni












ほらな、言ったとおりになっただろう?
少し前まで5年生が話していた内容を思い出す。だから言っただろ、周りにも気を配れと、後悔しても助けてやらないぞ、とも言った。
本当なら、俺だってあの天女とやらを始末してやりたい。あの天女は間違いなく毒だ。に悪影響を及ぼしている。大体、を別人と勘違いし、それを押し付けている。今のを否定してやがる。



ちゃんってさぁ、やっぱり忍者に向いてないのかもね」

「……伊作?」



さっきまで黙って茶を飲んでいた伊作が、も加わった5年グループを見ながら呟いた。



「だってさ、あんな簡単に人の情報公開してるし。まぁ、それだけ仲間を信じているんだろうけど。恋人だっているしね」

「まぁ、な。けれど、元々あいつ、忍者になるためにここに入ったわけじゃねーし、今も忍者を目指しているってこともないみたいだしな」

「あ、そうなんだ? 行儀見習いなんだ?」

「……いや、そうじゃないんだ」

「え?」

「……詳しく聞いたことはないんだがな、」



思い出す。が忍術学園に通うと決めた日を。行儀見習い、は絶対に理由じゃない。



「一つは、俺が忍術学園に通ってるからなんだ。村では子供たちに腫れ物扱いされてたから、あいつの親代わりが俺のトコに頼んできたんだよ」



けれど、それだけじゃ、は頷かなかった。あいつにとって、自分に対する子供たちの反応はどうでもよかったようで、別に気にしていなかったからだ。



「もう一つは、あいつがぽろ、っとこぼしたのを聞いたんだが……調べ物をするためらしい」

「調べ物?」

「一度見かけたのは、民間伝承や神話……後は南蛮の学問だったな……物理学だとは言ってたが」

「うーん……一貫性がないね。あ、そう言えば僕も見たことあるよ。あれは……呪術の本だったような。誰に呪いかけたいの、って思わず聞いちゃった」



答えてくれなかったんだけどね、と伊作は言う。
確かに、あいつがどんな調べ物をしているのか検討がつかない。物理学ってどんな学問だ。何をするんだ?



「で、今もその調べ物をしてるの?」

「あぁ。時間が空けば図書室に籠ってるだろ」

「長次が感心してたよ。『勉強熱心だ』って」

「常連だろうしな」

「それにしても。5年間も調べ続けてるなんて……。しかも、10歳でそのことに興味をもったってことでしょ? 向上心が高いのか、疑問がそんなに難題なのか……」

「そうだな。しかも、誰にも言わない調べ物だ」

「誰にも?」

「あいつの友人も、親も、俺も知らない。聞いてもはぐらかされる。……とにかく、中身は誰も言ってないし、言うつもりもないらしい」

「へぇ……気になるねぇ」

「まぁな」



気になって聞いても答えない。推測も出来ない。
本当に、は何を考えているのか……こればっかりは今となってもわからない。


後日、久々知をはじめとする5年生の仲好しグループが俺のところにやって来た。
俺は、そいつらの申し出を快く受け入れた。

前に言っただろ。助けてやらないぞ、と。















































アインシュタインの相対性理論は、1905年の特殊相対性理論と1916年の一般相対性理論の二つのことをを言う。年代を見れば分かってもらえるように、室町にこの理論について説明されたものは存在しない。なんちゃって室町だから、いけるかなと思ったんだけど、ダメだった。
これで、私の目的の大半は頓挫したことになった。けれど、まだ超常現象の可能性は捨てきれなかった。そこで、私は神隠しなどの伝承を調べた。他にも参考になりそうなものには全て手を出した。
そんな私の調べ物も、5年目を迎えた頃、空から天女様が降ってきた。それは、実は私の後輩で、しかも帰る方法を知っているというのだ。私は非常に喜んだと言えるだろう。目の前に、今まで探してた答えがあるのだ。

若菜ちゃんは、ある条件をクリアすることで帰れると言う。……私が。きっとそれは、若菜ちゃんが何度も私に認めさせようとしている、平成のであるという事実を私が認めることなんだろう。
私が早々にそれを認めないのは、帰る気がないからだ。

ここに来た当初は、もちろん、帰るために調べていた。けれど、兵助のことが好きになった。ずっと一緒にいたいと思ってる。そう思えるようになってからは、ここに留まる方法を探している。
私がここにやってきたときは、私の意思なんて関係なかった。だから、帰る時もそうかもしれない、と思った。それを何とかなくすために調べている。
……あんなに。あんなに私のことを想ってくれてる兵助に答えたいと思うのは、間違いじゃないはずだ。



「ねぇ、若菜ちゃん。今、時間いいかな」



夜、夕食後に若菜ちゃんの元に行った。最近、ふみや兵助達が内緒話をするようになった。私に言わないということは、私が知るのはまずいんだろう。だから、聞いてない。
皆が内緒話をしている間に、私は私の要件を済ませることにする。

いい加減、大勢の前で平成の話をされるのはゴメンだ。大分周りのフラストレーションも溜まっている。くのたま同級生に、「ねぇ、あの天女のうるさい口、閉じさせてやろうか?」と言われ、これは何とかしなければと思った。
それに、そろそろ潮時だろう。これ以上兵助を蔑ろにすると、今度こそ、手篭にされる気がする。



「先輩! どうしたんですか?」

「話を、しようと思って」



とりあえず、若菜ちゃんを黙らせるのなら、平成のであることを認めればいいんだろう。



「先輩……?」

「晴れた日だったよ。次の日のテスト勉強しようと思ってプリントを用意して……寝ちゃったみたいでね。気づいたら小舟で寝てたの。……みんな、単位取れたかな、って今でも思ってる」



ドン、と体に衝撃が走る。何とか後ろに倒れないように踏ん張った。
嬉しそうに涙ぐんでいる若菜ちゃんを見て、つい、笑いがこみ上げてきた。



悪いとは、思ってるんだけどね。








                             To be continued......




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もう少しで終わります。12話くらいになるかと。




                           2011/10/02