一歩手前にある幸せ





最近公開された映画のチケットを上司から貰った。行く時間がないから、と。まぁ、上司に比べれば時間に余裕がある。




「というわけで行ってきたんだけど」

「……行ってきたのか」



そこは、一緒に行こうと誘うところじゃないのか、とイタチが目を細くした。



「だって映画は一人で見るのが好きだし……。それにこれ、恋愛映画だったから」



イタチと恋愛映画見るとか……。それどんな罰ゲーム。修行だとしてもお断りしたい。



「そうか。それで、どんな話だったんだ?」

「んー。私は好きじゃなかったけど。幼馴染の男女の話なんだけど、二人とも周りが判るくらい想いあってるんだけど本人たちだけ気付かなくってすれ違って、最終的には女の子の方が別の人と結婚するって時にようやく両想いだったことに気付くんだけど、時すでに遅し。男の方はただひたすらに幼馴染の女の子を想い続けながら生きてくっていうバッドエンド。ハッピーエンドじゃないなら見に行かなきゃよかった」

「まぁ、結ばれるに越したことはないな」

「越したことはないっていうか。創作の世界なんだから、幸せな方がいいじゃない。……結婚するって時に実は好きでしたーなんて、女の子の幸せもぶち壊しじゃん」



きっとあの映画は純愛を売りにしているんだろう。一途に幼馴染を想い続ける男のひたむきさに感動する映画なんだろうな。残念ながら私は全く感動出来なかったけど。せっかくチケット貰ったから、と思って行ってみたけど、やっぱり私はアニメ映画でいいや。



「そうだ。母さんが、今日を連れてこいって。夕飯一緒にどうだ? ナルト君も連れて泊っていけばいい」

「……それさぁ、サスケ君嫌がりそう。同じ班になってからいつも競い合ってるみたいだし。私、ご飯くらいゆっくり食べたい……」

「けど、結婚したら、ナルト君が一人になってしまうだろ? それなら今から仲良くしておいた方がいいじゃないか」

「大丈夫だよ。ナルトはああ見えて生活能力めっちゃあるから心配ないよ……」



そもそも本来であれば一人暮らししてるはずの子だし。まぁ、あまり野菜を好まないのがネックだけど、そこは私が家を出ても様子見に来ればいいし、多分カカシ先生辺りが気を利かせてくれるだろう。



























結婚したら、そのまま嫁入りってことで、イタチの実家に引っ越すことになる。なにせうちは一族の長のしかも長男に嫁ぐのだから、「クソめんどくせー」とか言ってられないのだ。むしろ、結婚しますって向こうの家に言って反対されなかったのが不思議なくらいだ。逆に、イタチのお母さんから、「新婚期間くらいは離れて暮らした方がいいんじゃない?」と気を使われたくらい。正直、どっちでもいい。イタチにもどっちでも構わないと言えば、とりあえず先に籍入れて、それからゆっくり家を探すでもいいんじゃないか、と言っていたので、そんな感じになるんだろう。とにかく何よりもまず、籍を入れて一緒に暮らしたいらしい。あぁそうですか、と特に反対することもなかったので、それに従っている。
それにしても、随分とまぁ、顔が緩んでいる。それを指摘すると藪蛇になりそうなので言わないけれど、人目もあるので、そろそろ表情を引き締めていただきたい。
……何というか、普通結婚で浮かれるのって女性が圧倒的に多いんじゃないだろうか。アレかな、私はまだ実感が湧いてないからだろうか。……イタチと結婚するんだもんなぁ。



「まさかイタチと結婚することになろうとは……これ、私玉の輿狙ってたーとかって言われないかな」

「言われるわけないだろ。そもそも、玉の輿ですらない」

「えー。でもイタチって優良物件だったじゃない。評判だったよ」

「関係ない。俺はと結婚するんだから、他に興味もない」



やめよう。やっぱりこれ以上は藪蛇になりそうだ。



「それにしても、ナルト君とサスケが折り合い悪いなら、同じ部屋は良くないだろうな。最初は同じ部屋で寝てもらおうと思ったんだが……」

「あぁ、喧嘩するかもね」

「そうか。なら、に俺の部屋に来てもらって、を泊めようと思ってた部屋をナルト君に使ってもらおうか。それでいいか?」

「……うん、いーよ」



……ヤバい。今日の下着何色だったっけ……。







END



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結局イタチの家についても思い出せないやつ。



2017/11/10