14歳、おめでとうございます
今までにおかしいな、と思わなかったわけじゃない。ただ、思っただけでそのままにしていた。どうせ、なるようになる。なら、その流れに身を任せよう・と決めてたからだ。
目の前に置いた真っ白いクリームに包まれたケーキを見る。作れ、と昨日の夜、仕事が終わって家に帰ろうとしたところにやってきたミカドに強制され、眠い目を擦りながら作ったものだ。
おかしい。やっぱりおかしい。流石にこれは見過ごすわけにいかない、と思う。
「いやーイタチさぁ、やっぱ夜は家族とお祝いするんだろ? だからこの時間しか空かないよなぁ、って思って」
「……だからといって、昼に無理やり連れ出すのはどうなんだ……」
ミカドとイタチは真ん中に(私が作らされた)ケーキの置かれた机を挟み、向かい合って座っている。
「いいじゃんいいじゃん、イタチは黙って祝われてればいいんだってぇ。ほら、にケーキも作ってもらったし」
訂正。『作ってもらった』→『作らされた』だ。
「。わざわざありがとう」
イタチは甘いものが好きなのは、承知している。イタチ・ミカド・私で三人一組(スリーマンセル)を組まされた時に、それを知ったミカドが非常に大袈裟に騒いだのをよく覚えている。以来、私たちの集まる場所は大抵甘味屋だ。三人とも甘党。共通点だ。
「……イタチ、何歳になるんだっけ?」
「? 14だが……オレ達は同い年じゃないか」
「うん、そう。そうだね、14歳だ14歳。……ところで、兄弟仲は変わりないかな?」
「何を言ってるんだよ。イタチんとこの兄弟仲がいいのはお前も知ってるじゃないか」
「あぁ、そうだった。で、家族またはご近所とは仲が良かったっけ?」
「何も問題がない……思い当たることは何もないが……。、急にどうしたんだ?」
二人して私を訝しそうに見る。うん、そうか。何も問題ないようだ。
そうか、14歳。……やっぱりおかしい。私が本を読んだ記憶では、イタチは一族を弟を残して抹殺して、抜け忍になるんだけどな、13歳で。
「……ちなみにイタチ、抜け忍とかになる予定は?」
「お前、本当に一体どうしたんだ? アレか、俺がケーキ作らせたからなのか?」
「そうなのか……? 眠いのか?」
なさそうだ。
まぁ、いいんだけど。そうならないなら、それで。
「あーうん。眠いかもしれない。でも4時間くらいは寝れたから、夢見が悪かったのかも」
だから全ては私が眠かった上での妄言ということにする。
「さぁ、せっかく作ったんだから、ケーキ食べてよ。時間なくなっちゃうよ」
「それもそうだなー。じゃあ食うかー」
二人が座ってる机の、空いてる席に、ケーキを囲むように座る。ミカドが包丁を取り出した。
「三等分な!! あ、もちろんイタチにはチョコプレートやるから」
「……、何だこれは」
「え。『イタチくん たんじょうびおめでとう』って書いてあるんだけど……読めなかった?」
「いや、オレは14歳なんだが」
「さっき聞いたけど」
「ぶっはウケる!! くらいじゃね? イタチをこんな扱いすんの」
失礼な奴らだ。チョコペンで漢字を書くのがどれだけ面倒か知らないのか。まぁ、悪戯心が全くなかったわけじゃない。草木も眠る丑三つ時に急にケーキ作りを命じられた私の機嫌がいいはずがないのだ。これくらいなら、可愛いもんだと思う。
「いくら暗部の部隊長とはいえ、イタチもまだ14歳……。いくら上忍になろうとも、少年の心って忘れちゃダメかな、っていう私の気遣いだよ受け取ってね」
「……そうか……」
諦めたように、切り分けられたケーキを口に含んだ。
「美味しいよ、。ありがとう」
「……どういたしまして」
イタチは漫画通りの行動をしなかった。それが何を指すのか。いや、今までだって、原作と違うと思われるところは多かった。それに私が関わっている部分ももちろんある。これからは、もう私の知っているモノなんて、役たたずだ。今まで役に立っていたかどうかと聞かれたら、それはそれで首を傾げるものなのだけど。
けれど、誰も悲しい思いをしないならそれでいいじゃないか。悲しい思いをしそうでも、何かしようとはしなかっただろうけど、っていうか出来ない。私を除いて、この人たちはチートだし。私みたいな凡人に止められる訳もない。でもチートだろうが化け物だろうが、この人たちが私の気の置けない友人であることに変わりはないし、変えるつもりもない。
……そう言えば、まだ言ってなかった。
「イタチ。誕生日おめでとう」
「おう、おめでとうイタチ!!」
ケーキを頬張り、少し照れくさそうに笑ったイタチは、紛れも無く14歳だった。
END
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やっぱり書いちゃった。
何もかも、イタチのせいです。イタチが悪い。
2011/09/19